横の網は、縦の組織を壊さずに質の違う人をつなぐ仕組み

横の網は、縦の組織を壊さずに質の違う人をつなぐ仕組み

新しいサービスを考えるために、研究開発、営業、ブランドの三つの部署から人が集められました。初回の打ち合わせは、互いの部署が何をしているかを説明するところで時間切れになります。二回目からは、それぞれが自部署の立場を代弁する場になりました。営業が顧客から聞いてきた小さな不満は、研究開発の言葉に置き換えられないまま議事録に残り、三か月後、検討は各部署の持ち帰りで終わります。

部署を越えて人を集めることはできても、それだけでは異なる知はつながりません。私たちGreatRIVERは、決めて動かす縦の組織をそのまま残し、その上に、質の違う人どうしをつなぐ線を重ねる形を考えています。この重なりを「横の網」と呼んでいます。

横の網とは

横の網とは、評価と責任で決めて動かす縦の組織を残したまま、その上に、社内の評価制度に乗らない人を含む質の違う人どうしのつながりを重ね、問い直しを判断の場まで運ぶ仕組みのことです(GreatRIVER編集部)。

組織の形を語るとき、私たちは縦の線と横の網を分けて考えます。

図:縦の線と横の網(GreatRIVER作成)

縦の線は、決めて動かすためのものです。誰が決めるか、誰が実行するか、誰が責任を持つか。評価制度とポジションと責任が明確だからこそ、既存の事業を正確に動かせます。ただ、それだけだと、効率的でも新しいものは生まれにくい。

横の網は、つないで問い直すためのものです。誰と誰をつなぐか、どんな異質な知を入れるか、何を問い直すか。社内の評価制度に乗らず、半分は外の立場にいる人が加わるので、忖度や迎合なしに本質的な問いを立てられます。ただ、それだけだと、面白くても決まりません。

縦か横かを選ぶのではなく、両方が噛み合うことで、組織は動きながら変わりつづける。これが、澱まない組織の形について私たちが考えていることです。

縦の線は消さない。網は上に重ねる

横のつながりを大事にする話は、階層をなくす話と受け取られがちです。私たちは、そう考えていません。

新しい問いが生まれにくいのは、縦の線が悪いからではありません。縦の線は、評価と責任を一本の筋で通すことで、決める速さと動かす確かさをつくっています。それを崩せば、問いは増えても決まらなくなり、いまの事業まで揺らぎます。

だから網は、縦の線を引き直すのではなく、その上に重ねます。部署の境目はそのままに、部署をまたいで人と人を結ぶ線を足していく。網の目が増えても、決める人は変わりません。組織を作り替える大きな決断をしなくても、明日の定例から始められるのが、重ねる形のよいところです。

網を仕組みにするのは、人と場と行き先

人と人が知り合うだけなら、懇親会や社内の交流イベントでも起こります。横の網を仕組みと呼ぶのは、つながりを偶然に任せないためです。私たちは、網が働くかどうかを、人と場と行き先の三つで見ています。

人については、質の違う人がいることです。同じ会社の別部署の人は、部署が違っても同じ評価制度の中にいます。冒頭の三部署の人が自部署を代弁したのは、それぞれが自分の部署の評価を背負っていたからです。網には、社内の評価制度に乗らない人や、ほかの業界と専門を知る人が含まれている必要があります。ここで言う質の違いは、肩書きの違いではなく、拠って立つ評価の物差しの違いです。

場については、日々の議論の中でつながることです。年に一度の交流の機会では、問いが動くところまで行きません。異なる部署の話が、いつもの定例や検討の机に同じように上がるとき、網として働きます。

行き先については、縦の線に届くことです。網の上で生まれた問いは、どこかで決める人の判断に届かなければ消えていきます。横だけでは決まらないので、網の端は、必ず縦の線の意思決定につないでおきます。

部門横断チームやマトリクス組織とは、どこが違うのか

横の網は、いくつかのよく知られた形と重ねて読まれます。

部門横断のプロジェクトチームは、部署を越えて人を集める点で網に近い形です。ただ、集められた人が自部署の評価を背負ったままなら、冒頭のように各部署の代表が並ぶ場になります。質の違う人がいるかどうかが、分かれ目です。

マトリクス組織は、事業と機能のように二本の縦の線を交差させる形です。報告の先が二つになっても、どちらの線も評価と責任の線なので、網とは役割が違います。

社内公募や兼務の制度で、部署を越えて動く人を増やすことも、網を張る助けになります。ただ、その人の評価が元の部署で決まるかぎり、元の部署への遠慮は残ります。

社内のナレッジ共有の仕組みは、情報をつなぎます。情報がつながることと、問いが判断の場まで運ばれることは、別の働きです。

社外で経験を積む取り組みは、人の中に異なる知を育てます。その人が越境して得た知を、自分の組織の判断の場まで運ぶ線がなければ、知は本人の中にとどまります。

どれも、それぞれの目的では有効な形です。横の網は、これらと置き換えるものではなく、並べて置けるものです。

網が張られているかを、一つの案件で確かめる

いま動いている案件を一つ選び、関わる人を書き出してみると、網の有無が見えてきます。

まず、決める人は誰か。ここが空いていれば、網があっても問いは決まりません。次に、その案件に、社内の評価制度の外にいる人は何人いるか。ゼロなら、集まっているのは同じ縦の線の上の人です。そして、最近、一つの部署で生まれた問いが、別の部署の判断を変えたことはあるか。あれば、網はすでに働いています。最後に、ほかの業界の知が議論の材料として使われたのはいつか。思い出せなければ、網の目は社内の中だけで閉じています。

GreatRIVERは網の中で何を担い、何を担わないか

私たちGreatRIVERは、半内部人材として、企業の横の網の一部に加わります。担う役割と担わない役割は、はっきり分かれています。

図:網の中の持ち場(GreatRIVER作成)

担うのは、異質なものをつなぐこと、問いを変えること、固定化した見方を揺さぶることです。日々の仕事でいえば、異なる部署や専門の間に入って話を通じさせ、社内と社外、事業とデザイン、技術と文化、研究と顧客のように、分かれたままの知をつなぎます。担わないのは、意思決定です。決めて動かすのは縦の線、つまり企業の側で、企業の文脈を持つのも企業の側です。私たちは決める場に同席し、選ぶための材料と基準を用意しますが、決める人の席には座りません。

網の中の質の違いを保つことにも気を配っています。2026年9月時点の登録クリエイター94名は、個人事務所43名、企業所属26名、フリーランス25名と所属の形がさまざまで、職能もクリエイティブディレクターからストラテジックプランナー、編集者、コミュニティマネージャーまで広がります。一つの企業には、異なる専門性を持つ人がチームとして入り、状況に応じて人を組み替えます。外の人が一人だけなら、それは網ではなく一本の線にとどまるからです。

まとめ:決める線を残し、問い直す網を重ねる

横の網とは、評価と責任で決めて動かす縦の組織を残したまま、質の違う人どうしのつながりを重ね、問い直しを判断の場まで運ぶ仕組みです。縦だけでは新しいものが生まれにくく、横だけでは決まらない。両方が噛み合うところで、組織は動きながら変わりつづけます。

網を仕組みにするのは、質の違う人がいること、日々の議論の中でつながること、そして縦の線の意思決定に届くことです。

次に部署を越えたチームを組むときは、メンバー表に、社内の評価制度の外にいる人の名前が一つでもあるかを見る。あわせて、そのチームの問いがどの決める人に届くのかを、表の端に書き添えておく。それだけで、網の形が見えはじめます。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。

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