澱まない組織とは、外の問いから新しい仕事が生まれつづける組織

澱まない組織とは、外の問いから新しい仕事が生まれつづける組織

年度末の経営会議で、来期の重点施策が一枚のスライドにまとめられます。並んでいるのは、どれも今期の取り組みの続きです。業績は悪くなく、誰も手を抜いていない。むしろ全員が忙しい。それでも、この一年で新しく始まったものは何だったかと聞かれると、会議室はしばらく静かになります。

止まっているのは人ではなく、組織に新しい問いが入ってくる道です。私たちGreatRIVERは、その反対側にある状態を「澱まない組織」と呼んでいます。外の視点が会議と意思決定の場に入りつづけ、そこから新しいプロジェクトが生まれ、その動きが文化として根づいている組織のことです。見分けるのは規模や変化の速さではなく、新しい問いが入り、形になり、残っているかです。

挿絵:閉じた会議室で、いつもの顔ぶれが同じ資料に目を落とす

澱まない組織とは

澱まない組織とは、外の視点が会議と意思決定の場に入りつづけ、そこから新しいプロジェクトが生まれ、その動きが文化として根づいている組織のことです(GreatRIVER編集部)。

この言葉は、事業名の由来から来ています。アマナ創業者の進藤博信は「組織はビッグレイクではなく、グレートリバー」と語りました。人を溜め込み、同じ水が同じ場所に留まる湖は、やがて澱む。外から水が入りつづける大河は、動きながら澱みを生まない。私たちはこの言葉から、目指す状態に名前をつけました。

澱まない組織には、三つの条件があると考えています。最初は、外の視点が入りつづけていること。領域を越えて働く人が、内側の常識の外から問いを持ち込みます。次に、その問いが新しいプロジェクトとして動き出していること。役割、判断基準、会議体という受け皿を通って、議事録の中で終わらずに実際の仕事になる。最後に、それが一度きりの成功ではなく、文化になっていることです。外の人がいない会議でも同じ問い方が使われ、社員が自分で起案し、その動きが社外にも伝わっていきます。

反対の状態は、同じ人が同じ役割に固定され、外からの問いが入らず、創造性が一部の人の才能にとどまっている組織です。怠けているわけではなく、多くの場合とても忙しい。

なぜいま、澱まない組織という考え方が要るのか

企業の創造性は、これまで優れた広告やキャンペーンのような「つくったもの」で評価されてきました。いま問われはじめているのは、ブランドの位置づけや顧客体験の設計、協働の仕組み、人材と組織文化までを含めた、生み出しつづける組織の力だと私たちは見ています。Creative Output から Creative Engine への移り変わりです。

一つのヒット作には、いずれ他社が追いつきます。効率を高める手段が誰にでも手に入るいま、差がつくのは、新しいものを生みつづけられるかどうかです。ところが組織は、放っておくと澱む方向へ動きます。長く同じ場所にいるほど、言葉が似て、判断軸が似て、疑わない前提が増えていく。人は所属する場所の言葉で考えるからこそ一緒に働けるので、これは誰かの怠慢ではありません。だから澱まない状態は、意図してつくり、保ちつづけるものになります。

内側の努力だけでも、外に任せるだけでも、この状態が生まれにくい理由は、Creative Advantage Model という理論で別に整理しています。

澱まない組織と、近い言葉との違い

澱まない組織は、いくつかの言葉と重ねて読まれやすい考え方です。

図:澱まない組織と、近い言葉(GreatRIVER作成)

まず、大企業病の反対語として読まれることがあります。私たちは、大企業病は組織が大きいからではなく、閉じているから起きると考えています。澱まない組織は規模を小さくした組織ではなく、大きいままで開いている組織です。

次に、ティール組織やオープンタレント、ギグワークとの違いです。これらは主に、組織の運営のしかたや、働き方と雇用の柔軟性を扱う言葉です。澱まない組織が扱うのは、創造性という能力を組織の内側に移し、循環させることです。雇用の形がどれほど柔軟でも、外の問いが意思決定に届いていなければ、組織は澱みます。

内製化とも違います。いずれ社内だけで回せるようにする、という目標は分かりやすいものです。ただ、外の視点が途絶えた組織は、しばらくすると同じ場所で回りはじめます。私たちは、内製化をゴールに置いていません。

もう一つの誤解は、階層をなくした組織だというものです。私たちは、縦の組織はそのままに、横のつながりを重ねる形を考えています。評価と責任が明確な縦の線は、決めて正確に動かせますが、新しいものは生まれにくい。評価制度に乗らない横の網は、忖度なく問い直し、異質な知をつなげますが、それだけでは決まらない。両方が噛み合っていることが、澱まない組織の形です。

組織が澱んでいないかを見分ける

澱みは忙しさに隠れて見えにくく、一つの数字でも表せません。だから三つの条件に沿って、場面で確かめます。

図:澱んでいる組織と、澱まない組織(GreatRIVER作成)

外の視点が入りつづけているかは、直近の大事な判断の場に、社内の論理を背負っていない人が居合わせたかで分かります。年に一度の講演のような単発の機会は、ここでは数えません。

新しいプロジェクトが生まれているかは、起案者の顔ぶれで分かります。新しい取り組みを言い出すのが、いつも同じ数人ではないか。言い出した人が、一人で背負わされていないか。創造性が生まれる組織文化は、言い出した人に一人で背負わせないものです。外から来た問いが、実際の仕事になったかも確かめます。

文化になっているかは、外の人がいない会議で分かります。外の人が持ち込んだ問い方を、社員が自分の言葉で使っているか。それが隣の部署へ運ばれているか。確かめられないうちは、問いはまだ外の人の手元にあります。

外部の人と関わった期間の長さや、支援が終わったかどうかは、判断に使いません。関係が続いていても澱んでいなければよく、終わっていても澱んでいれば意味がない。長く居ること自体が目的になれば、それがまた新しい澱みになるからです。

GreatRIVERは、自分たちの現場で何を見ているか

私たちGreatRIVERは、創造性人材を企業の内側に迎え入れてもらう、伴走の仕事をしています。これまでに関わった企業は26社、組織やプロジェクトは45件、伴走期間は平均5.6ヶ月(最長18ヶ月)です。週1〜2日を中心に、日々の会議や意思決定の場に、チームの一員として加わります。

現場で私たちが問うのは、「澱んでいないか」の一つです。私たちが組織から出ていくことも、残りつづけることも、目的にしていません。動きが続いていれば形を変えながら関わり、組織とプロジェクトの状況に応じて人材を組み替えます。参画する人材が大切にしている四つのことも、すべて「関わった組織を、澱ませないこと」へ向かうように置いています。

もう一つ、続けていることがあります。プロジェクトの間ずっと、何を学び、なぜ決め、なぜ捨てたかを記録し、組織の知として残すことです。外の人の頭の中にだけ問いが残っていては、三つ目の条件に届きません。外部人材のノウハウが引き継ぎ資料だけでは社内に残らないように、残すべきは結論より判断の過程、つまり組織の暗黙知だと考えています。

正直に書けば、澱んでいないことを確かめる物差しは、まだつくっている途中です。数字がそろうまでは、関わった組織を「澱んでいない」と言い切らないことにしています。いま手がかりにしているのは、届く相談の変わり方です。長く関わる企業ほど、制作物の依頼が判断の相談に変わっていきます。

挿絵:開いた会議室で、外の人と社員が一枚の紙を囲んで描き込む

まとめ:問いが入り、形になり、残っているか

澱まない組織とは、外の視点が入りつづけ、新しいプロジェクトが生まれ、それが文化として根づいている組織です。規模の大小でも、雇用の柔らかさでも、内製の度合いでもなく、新しい問いが入り、形になり、残っているかで見分けます。

組織は放っておけば澱む方向へ動くので、澱まない状態は一度つくれば終わるものではなく、保ちつづけるものです。

来期の重点施策のスライドを前にしたら、項目の数を数える前に、この一年で外から入った問いがどの項目に姿を変えたかを探してみる。一つも見つからなければ、そこが組織の止まっている場所です。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。

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