外に任せるほど想いが宿らず、忖度が生まれる。それが外の限界

外に任せるほど想いが宿らず、忖度が生まれる。それが外の限界

外部のパートナーによる、半年がかりの調査の最終報告会です。市場の分析は鋭く、提言は筋が通っていて、質疑も和やかに終わりました。担当役員は「良い提案だった」と礼を言います。さらに半年後、提言の多くは手つかずのまま棚に置かれています。なぜ動かなかったのかを、相手に伝えた人はいません。相手も、それを聞いてはきませんでした。

提案の質が低かったわけではありません。外に任せることそのものに、構造的な限界があります。一つは、その企業への想いと社内の文脈が、仕事に宿らないこと。もう一つは、内と外のあいだに境界ができ、そこに新しい利害と忖度が生まれることです。私たちGreatRIVERは、この二つを合わせて「外の限界」と呼んでいます。Creative Advantage Model が示す二つの限界のうち、外側の半分を、この記事でもう一段深く定義します。

外の限界とは

外の限界とは、外に任せるほど、その企業への想いと社内の文脈が仕事に宿らず、内と外のあいだの境界に新しい利害と忖度が生まれて、正しいけれど実行できない答えにとどまる構造のことです(GreatRIVER編集部)。

外の限界は、外の人の能力が足りないという話ではありません。どれほど優れた専門家でも、外に置かれているかぎり働く構造です。そして、任せる範囲が広いほど、関わりが遠いほど、強く働きます。

宿らないものは、資料では渡せない

外に任せるとき、企業は多くのものを言葉にして渡します。目的、要件、予算、期日。足りなければ、社内の事情を説明する場も設けます。それでも渡しきれないものが残ります。

図:外に渡せるもの、渡しにくいもの(GreatRIVER作成)

要件と目的は、依頼の資料で渡せます。予算や既存事業との兼ね合いといった制約も、話せば渡せます。渡しにくくなるのは、経緯からです。なぜこの事業を、採算の合わない時期も続けてきたのか。なぜ数年前のある取り組みを、誰も口にしないのか。こうした経緯は、社内でも文書に残っていないことが多いものです。

いちばん奥にあるのが想いです。社員がその会社の何を誇りにし、何を守りたいと思っているか。外の視点がどれほど鋭くても、その企業を好きである理由までは持ち込めません。熱意も同じです。締め切りの前の晩に誰が残っているか、うまくいかなかったときに誰がいちばん悔しがるか。それは契約の範囲の外にあります。

宿らないまま出された答えは、正しくても動きません。冒頭の提言が棚に置かれたのは、制約を知らなかったからだけではなく、社員の側に「これは自分たちの答えだ」と思える手がかりがなかったからだと私たちは考えています。意思決定の場に加われないまま出された提言は、「正しいけれど実行できない」ものになりやすいのです。

忖度は、境界の両側で生まれる

外の限界のもう一つは、境界です。内と外のあいだに線が引かれると、その線の上に、どちらの組織のものでもない利害と遠慮が生まれます。

外の側の忖度は、よく知られています。作業量や発注範囲で報酬が決まる関わり方では、減らす提案ややめる提案が出にくい。この点は利害の向きとして別の記事で整理しました。

見落とされやすいのは、内の側の忖度です。任せた以上、細かく口を出すのは筋が違う。相手の専門に、素人が反論するのはためらわれる。長い付き合いの相手に、期待外れだったとは言いにくい。冒頭の報告会で、なぜ動かなかったかを誰も伝えなかったのは、この内側の遠慮です。

図:境界の両側で強まる忖度(GreatRIVER作成)

二つの忖度は、互いを強めます。外は言いにくいことを控え、内は任せたからと口を出さない。提案は無難に整い、実行の段で止まる。止まった理由が共有されないので、次も同じ形で外に任せる。任せるほど境界ははっきりし、境界がはっきりするほど、本音はそこで止まります。

長く付き合えば越えられる、とは限らない

外の限界は、付き合いを長くすれば解けると考えられがちです。たしかに、長い関係は文脈を増やします。社内の事情に通じた外部の担当者は、頼りになる存在です。

ただ、境界は残ります。契約の形が同じなら、利害の向きも変わりません。むしろ関係が長くなるほど、互いに失いたくないものが増え、言いにくいことも増えていきます。長さは文脈の不足を補っても、境界の忖度までは補いません。外の側で担当者が替われば、それまでに渡した文脈の多くも一緒に失われます。文脈は、資料ではなく人に宿っているからです。

依頼の説明を厚くすれば足りる、という見方もあります。要件と制約は、それで確かに伝わります。けれど経緯と想いは、書いた時点で少し別のものになります。暗黙知は経験を共にしなければ移らない、というのが私たちの立場です。判断の過程としての知が組織にどう残るかは、組織の暗黙知の記事で扱っています。

外に任せること自体を否定しているのではありません。仕様の決まった制作や、利害から離れた立場で全体を見渡してほしい調査は、外に任せることで質も速さも上がります。外の限界が効いてくるのは、何を解くべきかから問い直したい仕事を、同じ形のまま外に渡したときです。

任せ方を確かめる問い

外の限界がどこで働いているかは、いま外に任せている仕事について、次の問いで確かめられます。

提案した人は、それを決める場に居合わせているか。居合わせていなければ、制約を知らないまま答えを出していることになります。

提案の「なぜ」は、自社の言葉で書かれているか。業界一般の理由だけで組み立てられていれば、想いは宿っていません。

こちらが相手の提案に、最後に本気で反対したのはいつか。思い出せないなら、内側の遠慮が境界をつくっています。

終わったあと、判断の理由を社内の誰が説明できるか。成果物は手元に残っても、なぜそう決めたかを語れる人がいなければ、知は外に置かれたままです。

GreatRIVERの実践:境界を、議論の外に置かない

私たちGreatRIVERは、外の限界を、境界の位置を変えることで越えようとしています。創造性人材が、週1〜2日を中心に、数か月にわたって日々の会議と意思決定の場に加わる。依頼と納品の関係ではなく、同じチームの一員として、決める場に居合わせます。決める場にいれば、制約は会議の中で知り、経緯は社員と働く日々の中で知ることになります。

内側の遠慮を減らすことにも気を配ります。毎月のフォローアップミーティングで、企業の側と人材のパフォーマンスを共有し、状況に応じて人材の変更や調整を行います。期待と違うと企業の側から伝えられる場が、関わり方の中にあるということです。

参画する人材が大切にしていることの一つに、「正論ではなく、心を動かす。」があります。組織は正論では動かない。予算の構造や部署の力学、その人の動機を理解したうえで、対話で本心を引き出す。正しいけれど実行できない答えにとどまらないための、外から来た人の側の構えです。

内側だけで考えたときに何が止まるかは、対になる内の限界で書いています。外の限界は、内の限界を越えようとして外に頼ったとき、ちょうど裏側から現れます。だから片方だけを避けても、もう片方に行き当たります。

まとめ:任せるほど、遠くなるものがある

外の限界とは、外に任せるほど、その企業への想いと社内の文脈が仕事に宿らず、内と外の境界に利害と忖度が生まれる構造です。外の人の能力の問題ではなく、外に置かれていることそのものから生まれます。

要件と制約は渡せても、経緯と想いは資料では渡りにくい。忖度は外の側だけでなく、任せた内の側にも生まれる。付き合いの長さも、説明の厚さも、境界そのものは消しません。

次の報告会で提案を受け取ったら、拍手の前に、この提案のどこが自社でなければ書けなかった部分かを探してみる。一行も見つからなければ、そこに外の限界が働いています。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。

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