
内製化で内側に残すべきなのは、人の数ではなく判断の型
外注費の大きさが経営会議で話題になり、デザインを内製化する方針が決まります。デザイナーを二人採用し、一年がたちました。二人はよく働き、社内でつくる制作物の数は外注していた頃より増えています。ところが、新しい商品の見せ方を決める段になると、議論はやはり外からの提案を待つ形になります。いくつかの案が届き、その中から選ぶ。選ぶ基準を自分たちの言葉で説明できる人は、社内にまだいません。人は内側に入りましたが、判断はまだ外側にあります。
私たちGreatRIVERは、内製化を、必要な人を社内に抱えることだとは考えていません。何から問い、どう比べ、何を良しとして決めるかという判断の型を、組織の内側に残すことだと考えています。内製化の度合いは、人数や固定費の大きさではなく、その型が内側で使われているかで見ます。
内製化とは、必要な人を社内に抱えることではなく、何を問い、何を良しとして決めるかという判断の型を組織の内側に残し、社員がその型で新しい判断を下せるようにする取り組みのことです(GreatRIVER編集部)。
内製化の目的は、人の数ではなく判断の型にある
内製化という言葉は、多くの場合、外に出していた仕事を社内でまかなうことを指します。作業を内に戻し、人を採り、固定費として持つ。外注費が減り、ノウハウも社内にたまると期待されます。
いま内製化が改めて検討されるのは、外に頼むほど社内に何も残らないという手応えを、多くの組織が持ちはじめているからだと思います。その手応えは正しいものです。ただ、答えを人の採用だけに求めると、冒頭のように、人は内にいても判断は外にある状態が生まれます。
ただ、作業と人を内に戻すことと、判断が内に残ることは、別の段階です。

段を下から見ると、作業を社内でこなす、人を社内に抱える、判断の基準を言葉にする、その基準で新しく決める、という順になります。冒頭の会社は、二段目までは上っています。上の二段が空いているので、肝心の判断は外に残ったままです。反対に、多くの人を抱えていなくても、上の段に届いている組織もあります。外の専門家と同じ場で決めながら基準を言葉にし、それを自分たちで使っている組織です。
私たちが判断の型と呼ぶのは、一つひとつの結論ではありません。何から問い、どの順で比べ、何を良しとして選ぶかという、判断のしかたそのものです。個々の判断の過程は組織の暗黙知として残り、それが積み重なって誰もが使える形になったものが型です。
内製化をゴールにしない、という考え方
私たちGreatRIVERは、内製化を支援のゴールに置いていません。内製化を否定しているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。採用と育成は、組織に能力を残すもっとも強い手段です。そのことを前提にしています。
ゴールに置かないのは、社内だけで回せる状態と、組織が新しいものを生みつづける状態とが、同じではないからです。判断の型は、内に残っただけでは古くなります。同じ顔ぶれで使いつづけるうちに、型が前提にしていることを、誰も問わなくなるからです。型を内側に残すことと、外から問いを入れつづけることは、どちらかを選ぶものではなく、両方そろえるものだと考えています。
内製化の反対側にあるのは、外注そのものではありません。作業だけでなく判断まで外に預けてしまう丸投げです。外に頼んでいても判断を手元に持っていれば、型は内に残ります。社員が作業をしていても、判断を外の提案に預けていれば、型は残りません。内製か外注かという線と、判断が内にあるか外にあるかという線は、別の線です。
コストではなく投資になる条件
内製化が話題になるとき、よく比べられるのは費用です。外注費と人件費のどちらが安いか。けれど判断の型という見方に立つと、比べるべきは費用の大小ではなく、支出のあとに何が残るかです。費用を比べる表に「終わったあとに残るもの」という行を一つ足すだけで、議論の向きは変わります。

社員として抱える内製は、能力が残りますが、採用と育成に時間がかかり、固定費になります。外注は、必要なときに必要な分だけ頼める変動費で、成果物は残りますが、判断の型は残りにくい。私たちが半内部と呼ぶ置き方は、週あたりの稼働で変動費として持ちながら、同じ場で決めることで、問いと判断の型を内側に残すことを目指すものです。
ここで大事なのは、投資になる条件が、置き方を問わないことです。変動費で持てるだけなら、それはコストの工夫にすぎません。社員を抱えても、判断の型が言葉にならなければ、残るのは人件費です。どの置き方を選んでも、支出のあとに判断の型が内に残ったときにだけ、それは投資と呼べます。外部の人と組むときの費用の考え方は、利害の向きの記事でも触れています。
判断の型が残ったかを確かめる
型が内に残ったかどうかは、二つの場面で確かめられます。
一つは、外から届いた提案を選ぶ場面です。いくつもの案を前にしたとき、社内の誰かが「私たちはこの基準で選ぶので、この案にする」と言えるか。提案した側の説明をそのまま借りて選んでいるなら、判断はまだ外にあります。断る場面も同じです。合わない案を、自分たちの基準で断れるかどうかに、型の有無が表れます。
もう一つは、状況が変わった場面です。市場や事業の前提が変わったとき、社員が自分たちで基準を書き換えられるか。書き換えられない型は、マニュアルと同じで、前提が変わると使えなくなります。型が内に残っているとは、使えるだけでなく、直せる状態のことです。どちらの場面も、外の専門家が同席している会議のほうが確かめやすいものです。外の人の前で、自分たちの基準を言葉にして示せるかどうかです。
GreatRIVERの実践:問いと判断基準を、組織に残す
GreatRIVERの創造性人材は、週1〜2日を中心に、企業の会議や意思決定の場にチームの一員として加わります。私たちが企業に持ち込む力の一つに「組織に残す」を置き、問い、判断基準、プロセス、知識、ネットワークを組織に蓄積することを、関わる目的に含めています。
関わり方を考えるときも、内製を否定する立場はとりません。採用と育成を待てない領域と、外の視点が要る領域に、半内部という置き方を提案しています。私たちが出ていくことも、残りつづけることも、目的にはしていません。組織とプロジェクトの状況に応じて、関わる人も関わり方も変えていきます。
内製化の進み具合として私たちが見ているのは、社員の人数でも、私たちの稼働日数でもありません。関わりの初めは、私たちの側が問いを立て、基準の案を出すことが多くなります。見ているのは、そうして一緒に言葉にした基準を、社員が自分たちで書き換えはじめたかどうかです。そのまま使われているうちは、まだ借り物です。書き換えが始まったとき、型は組織のものになっています。
まとめ:人を内に入れる前に、判断を内に置く
内製化とは、人を抱えることではなく、判断の型を内側に残すことです。作業と人を内に戻しても、判断が外に残っていれば、内製化は半分にとどまります。多くの人を抱えなくても、判断の型が内で使われ、直されていれば、内製化は進んでいます。
そして、型は内に残しただけでは古くなります。内製化は外を締め出すことではなく、外の問いを受け止められる判断の型を、内側に持つことです。
内製化の計画には、採用人数の欄が必ずあります。その隣に、一年後に社内で言葉になっているはずの判断の基準を書く欄があるかどうか。その欄が空いたままの計画は、人を増やす計画ではあっても、内製化の計画ではありません。
執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)
企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。
GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。
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