丸投げは、作業ではなく判断まで外に預けたときに起きる

丸投げは、作業ではなく判断まで外に預けたときに起きる

新規事業の方向づけを、外部の専門チームに依頼することになりました。最初の打ち合わせで、担当役員は「専門家にお任せします。良い案を持ってきてください」と言います。三か月後に届いた事業案は、調べも組み立ても行き届いていて、社内の評判も上々です。ところが役員会で「なぜこの市場なのか。ほかの候補とどう比べたのか」と聞かれ、社内の担当者は外部の報告書のページをめくって答えを探します。一年後、事業案を見直す時期が来て、同じチームにもう一度声をかけることになります。

この依頼で外に出ていったのは、調査や資料づくりという作業だけではありませんでした。どの市場を選び、どの候補を捨てるかという判断まで、一緒に外へ預けられていたのです。私たちGreatRIVERは、こうした任せ方を「丸投げ」と呼んでいます。

丸投げとは

丸投げとは、外部に仕事を任せるときに、作業だけでなく、何を解き、どの方向へ進むかという判断まで預けてしまい、終わったあと組織の内側にその理由が残らない任せ方のことです(GreatRIVER編集部)。

外に頼むこと自体は、何も悪くありません。限られた人と時間で成果を出すために、外の専門性を借りるのは正しい選択です。問題になるのは、任せた範囲が作業を越えて、本来は事業のオーナーが持つべき判断にまで及んだときです。

丸投げは、受ける側の種類で決まるものではありません。制作会社にも、コンサルティング会社にも、私たちのような半内部の人材にも、社内の部下にも、同じように起こります。丸投げかどうかを決めるのは、任せる側が何を手元に残したかです。

丸投げの代償は、すぐには見えません。届いた成果物の質が高ければ、むしろ任せてよかったと感じます。見えてくるのは、役員会で理由を問われたとき、担当者が替わったとき、そして事業を見直す時期が来たときです。そのたびに、組織は外の誰かに理由を尋ねることになります。

任せることと、丸投げすることの境目

任せ方には幅があります。作業だけを頼む任せ方から、方向の判断まで預ける任せ方まで、一本の線の上に並べてみると、境目が見えてきます。

図:任せ方の幅と、丸投げの位置(GreatRIVER作成)

作業を任せるのは、もっとも分かりやすい任せ方です。その次に、表現の細部や技術の選び方のような、専門家の判断を任せる段階があります。これも、専門性を借りる以上は自然なことです。さらに進むと、要件や論点の整理を一緒に組み立てる段階になります。そして線の右端にあるのが、何を解くか、どちらへ進むか、何をやめるかという判断まで預ける段階です。丸投げと呼ぶべきなのは、ここです。

線のどこに立つかは、仕事ごとに変えてかまいません。同じプロジェクトの中でも、市場の調べものは作業として頼み、表現は専門家の判断に任せ、進む方向だけは手元で決める。そうした組み合わせが、外の力をもっとも生かす任せ方です。

境目は、整理を「一緒に」しているかどうかにあります。私たちに届く相談にも、「課題や要件の整理から、一緒にやってほしい」という声がよくあります。これは丸投げではありません。整理を外の力と組み立てながら、選ぶのは自分たちだという前提があるからです。この「一緒に」が抜け落ちたとき、整理の依頼は、判断の依頼に変わります。

丸投げは、怠けているから起きるのではない

丸投げは、任せる側の怠慢として語られがちですが、多くの場合は事情があります。ほかの仕事と兼ねながら担当していて、手が回らない。要件を整理できる人が社内にいない。相手のほうが詳しいので、口を出さないのが礼儀だと感じる。どれも、もっともな事情です。

受ける側の誠実さでも、丸投げは防げません。外部の専門家は、頼まれた範囲で最良の答えを出そうとします。方向の判断まで預けられれば、誠実な人ほど、それも引き受けて答えを出します。その答えがどれほど良くても、選んだ理由は受けた側に残り、頼んだ側には結論だけが届きます。

近い言葉に、外の限界があります。外に任せるほど想いや社内の文脈が宿らず、内と外の境界に忖度が生まれるという、外部と組むときに起こる構造の名前です。丸投げは、その構造の中で任せる側がとる、任せ方の名前です。外の限界は上手に任せても残りますが、丸投げは任せる側の選び方で変えられます。

任せる前に、決めることを分けておく

丸投げを避けるのに、外部の人を減らす必要はありません。任せる前に、決めることを種類ごとに分けておけば足ります。

図:任せる前に分けておくこと(GreatRIVER作成)

何を解くか、どちらへ進むか、何をやめるか。こうした判断について、外の力を借りるのは、問いの候補や選択肢、選ぶための材料を出してもらうところまでです。どれを選ぶかと、なぜそれを選んだかは、手元に残します。表現や手段の細部は、思い切って専門家に任せてかまいません。手元に残すのは、それが自分たちの基準に合っているかを確かめる役目です。

分けた内容は、最初の打ち合わせで相手と共有しておくと効きます。受ける側にとっても、どこまで踏み込んでよいかがはっきりし、遠慮なく選択肢を出せるようになるからです。

丸投げになっていたかどうかは、次に同じ種類の仕事を頼むときに分かります。依頼の書き方が前回より具体的になっていれば、判断の一部は手元に残っています。毎回同じ白紙の依頼から始まるなら、前回の判断は外に置いてきたままです。

GreatRIVERの実践:判断の場に同席し、選ぶのは企業の側に置く

私たちGreatRIVERの創造性人材は、外から助言するのではなく、議論の当事者として企業の会議に加わります。意思決定の場に同席し、選ぶための材料と基準を用意します。ただ、選ぶのは企業の側です。事業の意思決定は事業のオーナーが持ち、私たちは問いを動かし、前提を揺らす役を担う。この分け方を、私たちは大切にしています。

関わり始める前には、成果から逆算して、そのプロジェクトに必要な役割を見極め、設計します。どこまでを外から加わる人材が担い、どの判断を企業の側が持つのかは、この役割を設計する段階で考えておくべきことだと私たちは見ています。

正直に書けば、半内部という関わり方にも、丸投げの危うさはあります。深く入り込み、内部の言葉で話せるようになるほど、企業の側は判断まで預けやすくなります。「もうお任せします」という言葉が出たときこそ、私たちは判断を企業の側に戻すことを考えます。判断まで預かってしまえば、私たちが抜けたあとに、何も残らないからです。

最初の相談の段階で「全部お任せしたい」と言われることもあります。兼務で手が回らない事情を思えば、もっともな言葉です。そのときも、すぐに判断を引き受けるのではなく、まずは整理を一緒にするところから始めたいと考えています。材料と選択肢は私たちが厚くし、選ぶ場面には企業の方に居てもらう。それが、外の力を借りながら判断を内側に残す、いちばん確かな方法だと考えるからです。内側に何を残すかという反対側の考え方は、内製化の定義で詳しく書いています。

まとめ:作業は預けても、判断は手元に置く

丸投げとは、作業ではなく判断まで外に預けてしまう任せ方です。外に頼むことそのものでも、受ける側の能力や誠実さの問題でもありません。任せる側が、何を解き、どちらへ進み、何をやめるかという判断を手元に残したかどうかで決まります。

任せる相手や任せる量を減らす必要はありません。選択肢と材料は外の力で厚くし、選ぶことと、その理由は内側に置く。そうすれば、外の専門性を借りるほど、組織の判断は鍛えられていきます。

丸投げかどうかは、任せた仕事の量ではなく、手元に残した判断の数で決まります。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。

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