創造性は、才能や職種ではなく四つの働きでできている

創造性は、才能や職種ではなく四つの働きでできている

中期経営計画の人材方針のページに、「創造性の高い人材を育て、迎える」と一行書かれています。誰も異を唱えなかった一行ですが、人事評価の項目に落とそうとすると手が止まります。デザイン部門の話だろうという人がいて、若手の発想力のことだろうという人がいる。言葉は通じているのに、見ているものが揃っていません。

私たちGreatRIVERは、創造性を特別な才能や職種の名前ではなく、四つの働きの組み合わせとして捉えています。問題を発見する。前提を疑う。異なるものを結びつける。未来を構想し、実装する。この四つは、デザイナーにも営業や経理の担当者にも宿りえますし、チームとして組み合わせることもできます。

創造性とは、問題を発見する、前提を疑う、異なるものを結びつける、未来を構想し実装する、という四つの働きを組み合わせ、まだない価値・意味・関係を生み出す力のことです(GreatRIVER編集部)。

そのうえで、この四つの働きを領域をまたいで組み合わせて使える人を、私たちは創造性人材と呼んでいます。肩書きではなく、仕事の中で何をしているかで決まる呼び名です。

挿絵:人材方針の資料を前に、評価の項目を書けずにいる担当者

なぜ今、創造性という言葉を定義し直すのか

企業の強さの源が移りつつある。私たちはそう見ています。

長いあいだ、より速く、より安く、より正確につくれることが、そのまま企業の強さでした。いまはクラウドやSaaS、生成AIによって、効率を高める力は誰でも手にできます。すでにある問いに答える仕事は、道具がより速く、安く担うようになりました。

多くの人が共通して抱えていた問題も、すでにかなり解かれています。残っているのは、解いても採算が合いにくい問題か、まだ誰も問題だと気づいていない問題です。効率を突き詰めるだけでは、次の一手が見えにくくなっています。

だから私たちは、これから希少になるのは創造性だと考えています。問われるのも、つくったものそのものより、それを生み出しつづける組織の力です。創造性を一部の人の才能のままにしておくと、その人が異動した日に組織から消えてしまいます。組織の能力として持つには、まずこの言葉が何を指すのかを揃える必要があります。

創造性についてのよくある誤解と、近い言葉との違い

よく聞くのは、奇抜なアイデアを思いつくことだという受け取り方です。ひらめきは大切ですが、四つの働きの一部でしかありません。誰も言葉にしていない問題に気づくことや、案を制約の中で社内に通すことのほうが、実際の仕事の多くを占めます。

制作の職種を指す言葉だという受け取り方も根強くあります。けれど当たり前の前提に問いを出すことは、営業にも経理にもできます。職種の名前に頼らない人の捉え方は、創造性人材の定義で詳しく扱いました。

一部の天才だけが持つ才能だという見方もあります。四つの働きをすべて高い水準で持つ人は、多くはありません。だからこそ組み合わせ方が問われます。問題に気づく人と、それを形にする人が同じチームにいれば、組織としては創造性を持てます。

効率化や改善とも向かう先が違います。与えられた問題を速く解くのが効率なら、創造性は、どの問題を解くべきかを決めるところから始まり、社内で実際に動く形にするところまでを含みます。

図:創造性の受け取り方の違い(GreatRIVER作成)

創造性人材の見分け方は、肩書きではなく直近の仕事を聞くこと

頼りになるのは、肩書きや経歴書の職種欄ではありません。直近の仕事で、四つの働きのどれを、どの場面で使ったかです。採用の面接でも、社内の人材の棚卸しでも、同じ問いが使えます。

図:創造性をかたちづくる四つの働き(GreatRIVER作成)

問題を発見する

まだ誰も明確に言語化していない問題を見つける働きです。会議の議題に上がっていないことを、議題にする。確かめるなら「最近、誰も問題だと言っていなかったことを取り上げたのはいつですか」と尋ねます。

前提を疑う

当たり前だと思われている前提を問い直す働きです。本人の資質だけでは決まりません。評価や上下関係、前例があると、本質的な問いほど口にしにくくなるからです。「変えた前提は何で、そのあと誰と話しましたか」と尋ねると、問いを出したあとの話し合いまで引き受けたかが見えます。言い出した人を孤立させない組織の条件は、澱まない組織の定義で触れました。

異なるものを結びつける

異なる領域の知識や経験をつなぎ、既存の分類からこぼれた可能性を拾う働きです。別の業界や職種で過ごした時間が一人の中で重なっているとき、起きやすくなります。「ほかの分野から、いまの仕事に持ち込んだものは何ですか」と尋ねます。専門を持ったまま別の領域の判断に入る動きは、越境の定義にまとめています。

未来を構想し、実装する

まだ存在しない未来を描き、商品・サービス・ブランド・制度・組織として形にする働きです。描いて止めず、予算や担い手との兼ね合いに折り合いをつけて、社内で動くところまで運びます。「構想したもののうち実際に動いたのはどれで、何が壁になりましたか」と尋ねます。

同じ問いを組織にも向けてみます。そもそも何を解くのかを問い直す人はいるか。部署をまたいで話を通じさせる人はいるか。多くの場合、空いているのは人数ではなく、問いを立てる、現場で動かす、知見を残すといった役割のほうです。一人にすべてを求めない考え方は、良いプロジェクトの定義とも重なります。迎え入れ方も、採用、異動、育成、外部の人材と組むことを、局面に応じて組み合わせられます。

GreatRIVERの実践は、職種ではなく空いている働きから考える

私たちは、創造性人材が企業のチームに加わる仕組みを運営しています。登録しているクリエイターは、2026年9月時点で94名です。職能は編集者からプロジェクトマネージャーまでさまざまですが、六つの領域で見ると、94名のうち82名が三つ以上の領域にまたがっています。1人あたりのスキル数は平均13.1です。肩書きは一つでも、働きは一つの領域に収まっていない。創造性を職種で定義しない理由は、この実感にもあります。

提案の出発点も、職種ではありません。成果から逆算して必要な役割を見極め、どの働きが空いているかを先に考えます。そのうえで候補者と面談します。「デザイナーを一人」という相談の奥に、問いを立てる人がいないという構造が見えることは少なくありません。

参画する人材は、社員でも外注でもない半内部の立場で、日々の会議や意思決定の場に入ります。議論の当事者として「そもそも何を解くのか」から問い直し、部署のあいだに入って話を通じさせ、試作に起こして現実の反応で確かめる。前提を疑う働きは、社内の評価や上下関係の外にいる人のほうが担いやすい面があり、この立ち位置は半内部人材を定義する記事で扱います。

働きを使って終わりにしないことも大事にしています。何を学び、なぜ決め、なぜ捨てたかを記録し、組織の知として残します。人が入れ替わっても問いの立て方と判断の型が内側に残れば、創造性は一部の人の才能から組織の能力に近づきます。私たちが澱まない組織と呼んでいるのは、その状態が続いている組織のことです。

挿絵:部署の違う人たちが一枚の紙と試作を囲んで話し合う

まとめ:人材方針の一行を、四つの問いに書き換える

創造性は、特別な才能や職種の名前ではなく、四つの働きの組み合わせです。創造性人材とは、四つを領域をまたいで組み合わせて使える人のことです。一人で揃わなくても、組み合わせの違う人を重ねれば、組織は創造性を持てます。

人材方針の「創造性の高い人材」という一行は、そのままでは評価の項目になりません。誰も言葉にしていない問題を取り上げたか。当たり前の前提に問いを出したか。別の領域の何を持ち込んだか。描いたものを社内で動く形にしたか。四つの問いに書き換えたとき、その一行は、自社のどこに何が足りないかを示す一行に変わります。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。

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