
プロジェクトデザイナーの仕事は、計画の前に問いと座組みをつくること
新しいプロジェクトの初回の打ち合わせで、すでに線表が配られています。半年分のタスクが週単位で並び、担当者と期日まで埋まっている。準備の良さに感心しながら、ひとりが尋ねます。「これが全部終わったとき、何が変わっていれば成功ですか」。返ってきた答えは、三人から三通りでした。計画は精密なのに、何のための計画かがそろっていません。
計画を立てる前に、決めておくべきことが二つあります。そのプロジェクトで何を解くのかという問いと、誰がどの役割で関わり、どう決めるのかという座組みです。私たちGreatRIVERは、この二つを設計する人をプロジェクトデザイナーと呼んでいます。GreatRIVERの事業を率いる杉山の肩書きでもあります。
プロジェクトデザイナーは、計画より先に仕事を始める
プロジェクトデザイナーとは、計画を立てる前に、そのプロジェクトで何を解くのかという問いと、誰がどの役割で関わりどう決めるのかという座組みを設計する人のことです(GreatRIVER編集部)。
タスク、期日、予算の配分といった計画は、問いと座組みが決まってはじめて意味を持ちます。問いが曖昧なまま計画を精密にすると、正しく進むほど的を外していきます。座組みが曖昧なままだと、決める人が見えず、計画は承認の場に出るたびに書き換わります。
問いを設計するとは、渡された課題をそのまま受け取らず、そもそも何を解くべきかから考えることです。なぜいまそれを解くのか。解けたら誰の何が変わるのか。それを関係者がそろって言える一文にします。
座組みを設計するとは、誰が決め、誰がつくり、誰が問い直すのかを置くことです。社内のどの部署と、外のどんな知を組み合わせるのか。どの会議で何を決めるのか。名前を書く前に、役割と決め方の形を描きます。

なぜいま、計画の前の設計が要るのか
市場が成熟し、効率化や合理化を突き詰めるだけでは、次の一手が見えにくくなりました。解けば利益が出る問題の多くはすでに解かれ、残っているのは、解いても採算が合わない問題か、まだ誰も問題だと気づいていない問題だと私たちは見ています。
答えの決まっている仕事なら、計画から始めて構いません。けれど何を解くかがまだ決まっていない仕事を計画から始めると、既存の物差しで測れるものだけが線表に残ります。新しい問いは、タスクの粒度に分解できないからです。
計画そのものは、以前よりずっと速くつくれるようになりました。情報を集め、分析し、資料にまとめる仕事は、生成AIがより速く安く担います。整った線表が一日でそろう時代には、差がつくのは線表の出来ではなく、その一行目に何を置いたかです。
座組みも同じです。新しい問題は、人と、人を取り巻く環境のずれから生まれます。新しい解決策は、同じ業界の外にある知から生まれることが多い。外の知を座組みに入れるかどうかは、実は計画の前に決まってしまいます。一度線表に担当者の名前が書き込まれると、あとから別の視点の席を足すのは難しくなるからです。
プロジェクトマネージャーやコンサルタントとの違いは、関わりはじめる時点にある
プロジェクトデザイナーは、いくつかの近い役割と混同されやすい言葉です。

プロジェクトマネージャーは、計画どおりに進めることに責任を持ちます。遅れやリスクを見つけ、手を打つ。計画があってはじめて力を発揮する役割です。コンサルタントは、議論の外から全体を描き、論点と選択肢を整えて答えを示します。ファシリテーターは、決められた場の議論を前に進め、全員が話せるようにします。
どれも欠かせない役割で、プロジェクトデザイナーが代わるものではありません。違いは、関わりはじめる時点です。プロジェクトデザイナーは、計画も、課題の定義も、会議の場も、まだない段階から仕事を始めます。一人が複数を兼ねることもありますが、そのときも「いまどの役割で話しているか」を分けておくと、議論が混ざりません。
もう二つ、よくある誤解があります。デザイナーという名前から、見た目を整える人だと思われることがあります。ここで設計するのは、形のあるものより先にある、問いと人の配置です。また、最初だけ関わる人だと思われることもあります。実際には、途中で問いが変われば座組みを組み直すのも、プロジェクトデザイナーの仕事です。
座組みの中でも、とくに決め方の設計は意思決定のデザインとして別に書いています。また、プロジェクトデザイナーの仕事の多くは、決める人との壁打ちの中で進みます。
プロジェクトデザイナーの仕事が済んでいるかを確かめる
プロジェクトデザイナーという肩書きの人がいなくても、その仕事が済んでいるかどうかは確かめられます。
何を解くのかが一文で書けて、関係者のあいだでそろっているか。冒頭の三通りの答えは、この仕事がまだ済んでいない合図です。参加者の名前の横に、決める、つくる、問い直すのどれかを書けるか。外の知が入る席が、少なくとも一つ空けてあるか。問いが変わったときに、座組みを見直す場が決まっているか。
反対に、線表が最初に配られる、会議の顔ぶれが部署の代表で決まる、外部の協力先を計画ができてから探す。こうした進み方が続くなら、計画の前の設計は誰の仕事にもなっていないのかもしれません。
GreatRIVERの実践:無いところから、問いと座組みを描く
アマナは、年間1〜2万件のプロジェクトデザインを行ってきました。GreatRIVERに登録しているクリエイターのネットワークも、その目利きでつくられています。GreatRIVERでプロジェクトデザイナーを名乗る杉山の仕事も、人を紹介する前の、この設計にあります。
ご相談を受けると、ヒアリングからディスカッションを経て、支援のチームを提案します。進め方の中では、短期の成果から中長期の組織の変化までを一本の線でつないだタイムラインを描きます。最初の数か月で何を確かめ、その先で組織の何を変えたいのか。問いの側から線を引き、混成チームで共有します。始まってからも、組織とプロジェクトの状況に応じて人材を組み替えます。座組みは、一度で決まりきるものではないからです。
私たちの人材が大切にしていることの一つに、「無いことを、面白がる。」があります。戦略も方針も、ときには意思さえ、まだ組織に無いことがある。無いということは、ともにつくれる余白があるということです。プロジェクトデザイナーの出発点も、ここにあります。問いがまだない状態を欠陥として扱わず、設計できる余地として扱います。
一つ、線を引いていることがあります。座組みを描く人が、決める席に座るわけではありません。決めるのは企業の側の責任者で、企業の文脈を持っているのも企業の側です。プロジェクトデザイナーは、その人が決められる形を整える役割です。思いを持つ人が最小人数で良い議論をしている状態、つまり良いプロジェクトをつくるための設計だと考えています。
まとめ:計画の精密さより、問いと座組みの確かさ
プロジェクトデザイナーとは、計画を立てる前に、何を解くのかという問いと、誰がどの役割で関わりどう決めるのかという座組みを設計する人です。プロジェクトマネージャーやコンサルタントと競う役割ではなく、それらの役割が力を発揮できる土台を、計画より前の時点でつくります。
次に線表が配られたら、一行目のタスクの上に空いた一行を足してみる。そこに「このプロジェクトで何を解くか」と「誰が決めるか」が書けるかどうかで、計画の前の設計が済んでいるかが分かります。
執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)
企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。
GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。
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