
外部人材活用のデメリットは、社員と同じに扱うと意見まで似てくること
半年前、外から迎えた専門家に、社員と同じ入館証を渡しました。社内のチャットにはすべて招待し、定例の会議にも、部の集まりにも声をかけた。早く馴染んでもらいたいという、歓迎のつもりでした。半年後の会議で、その人が口を開きます。言っていることはもっともで、よく考えられている。ただ、同じ列に座る社員の誰が言っても、おかしくない内容でした。
外部人材活用のメリットは、社内にない視点と経験を、採用を待たずに迎えられることです。費用を変動費として持てることも、ここに加わります。デメリットは、関わる期間が限られること、知見が積み上がりにくいこと、社内の事情が届きにくいこと。そしてもう一つ、見落とされやすいものがあります。近づけすぎると、外の見方が社内の見方に似てくることです。こうしたメリットとデメリットは、業務委託か副業か顧問かという契約の形より、その人と組織とのあいだの距離で入れ替わります。

外部人材活用とは
外部人材活用とは、社員として雇用していない人の専門性を、自社の仕事に招き入れることです。業務委託、副業、顧問と形はさまざまですが、同じ業務委託でも、成果物だけを受け取る関わり方もあれば、毎週の定例に出て意思決定の場にも同席する関わり方もあります。契約の形が同じでも、組織から見たその人の位置は大きく違い、メリットとデメリットを分けているのは、この位置のほうです。
外部人材活用のメリットとデメリット
外部人材活用のメリットは、組織の外にいるからこそ持てる視点と経験を、採用を待たずに内側へ招けることです。そのメリットは組織との距離で決まり、近づけすぎても遠ざけすぎても、デメリットに入れ替わります(GreatRIVER編集部)。
外部人材の価値は、社内にない知識や技能だけではありません。社内で当たり前になっていることを、当たり前と思わずに見られること。その見方は、組織の外に足場があることから生まれます。よく挙げられるメリットとデメリットを、四つの観点で並べます。

視点:社内にない見方が入る/近づけすぎると似てくる
加わって二週目の打ち合わせで、毎月まとめている報告書を誰が読んでいるのかと、何気なく尋ねる。社内で長く議題にのぼらなかった前提に、こうした素朴な問いを向けられるのは、外から来た人ならではです。ただ、社内の情報に深く触れ、同じ会議に出つづけるうちに、その見方は少しずつ社内の見方に近づいていきます。冒頭の会議で起きていたのは、このことです。
時間:採用を待たずに始められる/関わる期間が限られる
外部人材なら、採用を待たずに、話がまとまった翌月の定例から加わってもらうこともできます。その裏返しとして、関わる期間には終わりがあります。契約の最終月、書きかけの企画書が、続きを書く人の名前のないまま置かれる。長く育てる仕事を外部人材だけに預けると、こうした幕切れを迎えやすくなります。
コスト:変動費として持てる/知見が積み上がらないことがある
外部人材への支払いは変動費として持てるので、固定費を増やさずに専門性を試せます。ただ、どう考え、なぜその判断をしたのかが社内に伝わらないまま契約が終わると、数か月後に似た相談が別の部署から持ち込まれ、また一から見積もりを取り直すことになります。費用は使ったのに、組織の中には何も積み上がっていない。
社内の事情:距離を保てば両立できる/遠すぎると届かない
予算の時期や部署どうしの関係といった社内の事情は、日々のやりとりの中でしか伝わりません。関わりが遠すぎると、見方は新しいのに動かしにくい提案になりがちです。適度な距離を保てれば、外の見方と内側の文脈の両方を持った人として関わってもらえます。
こうして並べると、視点のデメリットは近づけすぎたときに起き、社内の事情のデメリットは遠ざけすぎたときに起きる、と向きが逆であることに気づきます。
メリットとデメリットは、組織との距離で入れ替わる
外部人材と組織との関係を、一つの軸の上に置いてみます。

左の端は、社員や内製の位置です。組織の文脈を共有しているので話が早い代わりに、長くいるほど見方は周りと似てきます。右の端は、外部のコンサルティングや外注の位置です。見方は新しく、しがらみもない代わりに、社内の文脈と制約が届かないまま考えることになりやすい。どちらの端も組織に必要な関わり方で、課題は端にいることではなく、外部人材に期待していることと、置いている位置が噛み合っていないことです。
外の視点を期待して迎えたのに、扱いは社員と同じにしている。経緯を踏まえた提案を期待しているのに、会議には呼んでいない。デメリットとして語られることの多くは、このずれから生まれ、契約の形を変えても位置が変わらなければ、また現れます。軸の真ん中には、外の知と経験を持ったまま日々の会議や意思決定に加わりつづける位置があります。ただし、関わるほど人は左の端へ寄っていくので、真ん中は放っておくと保てません。
近すぎるとき:見方が社内に似てくる
入館証を渡した側は、何も間違ったことをしていません。外から来た人も社内の言葉や作法を学びますが、その中には、この話はあの部署には出さないほうがいい、この数字は去年も同じだから気にしなくていい、といった社内の見方も含まれています。
扱いが社員と同じになると、期待されることも社員と同じになります。外から見て気になることを口にするたびに経緯を丁寧に説明されると、やがて口にする前に、自分で経緯を考えるようになる。半年後の会議で起きていたのは、その人の力が落ちたことではなく、外にいたから見えていたものが、内側の見方に置き換わったことです。
遠すぎるとき:社内の事情が届かない
作業だけを切り出して頼む、外から助言だけを受ける関わり方では、依頼も成果物も担当者を通じて行き来します。出てくる案は新しくても、来期の予算がすでに固まっていることや、似た施策で部署とのあいだにしこりが残っていることを知らずに書かれているかもしれません。受け取った社内の人は内容に頷きながらも手をつけられず、資料は共有フォルダに置かれたままになります。
社内の事情は、聞かれなければ誰も話さないことのほうが多い。遠すぎる関わりのデメリットは、外部人材の側ではなく、置かれた位置の側にあります。
外部人材活用の注意点:メリットを活かす距離の取り方
注意点は、契約の形より先に、何を期待するかに合わせて、どの位置で関わってもらうかを決めることです。外の視点を期待するなら、真ん中を保つために、開くものと分けておくものを考えます。
開くのは、情報と、会議と、意思決定の場です。分けておくのは、役割と期待です。外の目で見てほしいことを迎える前に言葉にし、本人とも周りの社員とも共有しておく。会議では、外から見てどう見えるかを先に聞く。社内の作法への馴染み具合を評価に入れない。そして数か月に一度、外から来た人ならではの問いが最近あったかを本人と振り返ります。減っていたら、近づきすぎの兆しかもしれません。
私たちGreatRIVERは、この真ん中の位置を「半内部」と呼んでいます。社員でも外注でもない立場で、外から異質な知と経験を持ち込みながら、日々の会議・議論・意思決定に継続的に参加する関わり方です。しがらみの外から問いを立てて内の文脈で動かし、コストは変動費で、問いと判断の型が組織の内側に残ることを目指しています。内製を否定するものではなく、採用と育成が最も強い手段であることを前提に、その時間を待てない領域と、外の視点が要る領域に、半内部という置き方があると考えています。

まとめ:距離を決めてから、迎え方を決める
外部人材活用のメリットは、社内にない視点と経験を、採用を待たずに迎えられることです。デメリットは、関わる期間が限られること、知見が積み上がりにくいこと、そして近すぎれば見方が社内に似てくること、遠すぎれば社内の事情が届かないことです。どれも、契約の形より、組織との距離によって表れ方が変わります。
だから、比べる順番を入れ替えてみる。どの契約の形にするかの前に、その人にどの位置で関わってほしいかを決める。情報と会議と意思決定の場は開き、役割と期待は外の目のまま保つ。
迎える側の歓迎の気持ちは、そのままでかまいません。入館証も、そのまま渡せばいい。
近づけることと、同じにすることは違う。
執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)
企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。
GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。
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