
大企業病は、組織が大きいからではなく閉じているから起きる
期初に、新しい組織図が配られます。いくつかの部の長の名前が入れ替わり、新設の推進室には若手の名前も載っている。それなのに三か月後の定例では、新しい顔ぶれのまま、同じ議題に同じ結論が出ている。組織を変えたはずなのに、なぜ元の姿に戻ってしまうのでしょうか。
入れ替えたのが、内側の名前だけだからです。大企業病は、大きさの病ではなく、閉じていることの病です。人や制度を内側でいくら入れ替えても、外からの問いが決める会議に入る経路が閉じたままなら、組織は元に戻っていきます。処方は、その経路を開き直すことにあります。決める会議の出席者欄に、社内の論理を背負っていない人の名前があるか。その人の問いを、隣の部署へ運ぶ社員がいるか。確かめるべきは、この二つです。

大企業病の対策は、なぜしばらくすると元に戻るのか
大企業病とは一般に、組織が大きくなるにつれて意思決定が遅くなり、前例主義や部門の壁が強まって、新しい挑戦が生まれにくくなる状態を指します。稟議書には判子の欄が横に並び、前例のない提案は「過去に事例はあるか」の一言で差し戻される。ただ、症状の一覧だけでは、なぜ治りにくいのかが見えてきません。
大企業病とは、外からの問いが決める会議に入る経路が閉じたまま、人や制度を入れ替えても同じ結論に戻ってしまう組織の状態です(GreatRIVER編集部)。
打たれる手は、たいてい似ています。若手の抜擢、評価シートの書き換え、組織の再編、外からの経験者採用。どれも有効で、発表の直後にはたしかに空気が変わります。ただ、抜擢された人も、外から採用した人でさえ、しばらくすると社内の論理で話すようになる。人は所属する場所の言葉で考えるようになるからこそ一緒に働けるので、これは悪いことではなく、そういうものです。
だから、問うべきは人の側ではなく、入れ替えたあとに何が入ってくるかです。よくある対策は人と制度に向いていて、外からの経路には向いていない。組織図を何度書き換えても元に戻る理由は、そこにあります。
大企業病の原因は、決める会議の出席者欄に表れる
社外の人と顔を合わせるのが発注と納品の場面だけになると、出席者欄には社内の名前しか並ばなくなります。名前が変わらなければ問いも変わらず、役割を組み替える理由もなく、同じ人が同じ持ち場に固定されていく。持ち場を越える一歩を促す問いが入らないので、新しいプロジェクトは生まれにくくなり、創造性は一部の人の才能にとどまります。そこへ組織図の入れ替えが重なると、新しく就いた人も社内の言葉で話しはじめ、同じ結論が出て、また組織図が書き換えられる。循環が一周します。

この循環の中では、出席者がどれほど優秀でも、口にできる問いに限りがあります。本質的な問いほど、立てた瞬間に誰かの立場を脅かすからです。かといって、外の人に任せきりにしても循環は止まりません。意思決定に加われないまま出した提言は、社内の制約とかみ合わず、出席者欄の外で止まります。
出席者欄に要るのは、その間に立つ人です。外の目で問い、内の文脈で動かす人が、決める会議に続けて居合わせているかどうか。大企業病の原因を一つに絞るなら、ここになります。
大企業病にならない組織の、三つの条件
GreatRIVERという事業名は、アマナ創業者 進藤博信の「組織はビッグレイクではなく、グレートリバー」という言葉に由来します。私たちはこの言葉を手がかりに、大企業病と反対の側にある組織を、澱まない組織と呼んでいます。外部の人を多く抱えている組織ではなく、外から持ち込まれた問いと社内の文脈が、決める会議で出会いつづけている組織のことです。
最初の条件は、外の視点が入りつづけていること。年に一度の講演や単発のワークショップは、次の定例までに薄れるので数えません。二つ目は、入った問いが役割・判断基準・会議体を通って、新しいプロジェクトとして動き出すこと。受け止める先がなければ、良い問いも議事録の中で終わります。三つ目は、外の人がいない会議でも同じ問い方が使われ、文化になっていることです。三つの条件は、外の視点が出席者欄を開き、新しいプロジェクトが同じ結論を変え、文化が組織図の入れ替わったあとにも問い方を残す、というように先の循環を断ちます。
三つ目の条件を支えているのは、社内の人です。私たちは2024年から26社と関わり、伴走の形では週1〜2日を中心に、組織の一員として会議に加わってきました。外の視点を持ち込むこと自体は、どの現場でも始められます。差が出るのは、持ち込まれた問いが一つの部署で止まるか、隣の部署へ移っていくかです。この差の理由はまだ解明しきれていませんが、社内に語り手、つまり外からの問いを社内の言葉で語り直し、隣の部署へ手渡す社員がいる企業では横に広がります。境界を越えるのは、社内の言葉です。
長く関わった企業では、届く相談が制作物の依頼から判断そのものの相談へ変わり、社内で判断基準が共有されるようにもなりました。ただ、一年を超えて関わったのはまだ2社で、一般則は引けません。伴走期間は平均5.6ヶ月(最長18ヶ月)で、短く終わった関わりについては、まだ語れることが多くありません。
大企業病の対策と処方箋:まず、止まっている場所を見立てる
抜擢も再編も、それ自体は有効な手段です。ただ、三つの条件のどこで止まっているかを確かめないまま手を打てば、処方はまた人と制度に向かいます。見立ては、三つの条件に一つずつ問いを当てるところから始まります。
この四半期に、外から持ち込まれた問いはいくつあったか
そこから社員が起案して動き出したプロジェクトはあるか
外の人がいない会議でも、その判断基準が使われているか
四半期の振り返り資料の余白に、答えを短く書いてみる。答えの書けない問いが、止まっている場所です。
一つ目が書けないなら、外の人を決める会議の内側へ招くところから始まります。顧問や制作会社など外の人を迎えている企業は多くても、その多くは成果物を返す関係にあり、決める会議の外側にいる限り、外の視点は組織の手前で止まります。招くときの目安は、複数の組織を知っている人であること、範囲を狭める提案ややめる提案をしても損をしない取り決めにしておくこと。年に数回では刺激で終わるので、同じ会議に続けて居合わせてもらい、守秘の範囲は参加の前に契約で取り決めておきます。
二つ目が書けないなら、受け止める先が欠けています。誰が決め、何を良しとし、どの会議で扱うのかを先に置く。決める人とつくる人がそろう小さな単位のほうが向いています。
三つ目だけが書けないなら、問いはまだ外の人の手元にあります。内側の語り手を一人決め、問いを隣の部署へ運ぶ役割を、本人と上長の両方に伝えておく。役割表に名前の載らない仕事だからこそ、先に決めておく意味があります。
三つ目の問いは、外の人への依存を見分ける問いでもあります。関わった時間の長さは基準にしません。時間だけを追えば、長く居ること自体が目的になり、それがまた閉じる理由になるからです。

まとめ:その出席者欄に、外の名前はあるか
大企業病が人を入れ替えても元に戻るのは、入れ替えたのが内側の名前だけで、外からの経路が閉じたままだからです。開いた状態が続くかどうかは、外の視点を持ち込む人と、それを社内の言葉で語り直す人が、同じ会議にいるかどうかで決まります。
次に組織図が配られたら、名前の入れ替わりより先に、いちばん大事なことを決める会議の出席者欄を開いてみる。そこに、社内の論理を背負っていない名前と、その人の問いを隣の部署へ語り直せる名前は、並んでいるでしょうか。
執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)
企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。
GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。
Download
資料ダウンロード
サービス内容や導入イメージを
まとめた資料をご用意しています。
サービス内容や導入イメージをまとめた資料をご用意しています。
GreatRIVERのサービス概要資料や、課題解決に有効な情報をまとめたホワイトペーパー、事例集などをダウンロードいただけます。サービスの全体像を知りたい際や、社内検討に向けた情報収集にも、ぜひご活用ください。
Download
Contact
お問い合わせ
採用、取材、協業についてお気軽にご連絡ください。
採用、取材、協業について
お気軽にご連絡ください。
GreatRIVERは、「いいクリエイターにアクセスしたい」と考える企業と「企業ともっと深く関わり、並走したい」と考えるクリエイターをつないでいます。クリエイティブ人材を求める企業の方でも、クリエイターとして参画したい方も、まずはお気軽にご連絡ください。クリエイティブファームとの競合や、メディア・団体との連携も歓迎しています。
Join / Ask