週2日の業務委託クリエイターに問われるのは、日数より入り方

週2日の業務委託クリエイターに問われるのは、日数より入り方

月曜の朝、ノートパソコンを開いて最初に読むのは、メールではありません。この会社のチャットで、木曜の夕方に画面を閉じてから伸びたスレッドを、上から順にたどっていきます。三日のあいだに、話は思った以上に進んでいます。ところどころに自分の名前が出てきて、そのたびにスクロールする指がゆるみます。週に二日、業務委託でこの会社のチームに加わっている人の、一週間の始まりです。

業務委託で企業に入るクリエイターの働き方とは、外の立場を保ったまま、週に数日、企業のチームの内側で働くことです。そこで組織の一員として見られるかどうかは、日数の多さだけでは決まりません。社内の言葉で話せるか、言いにくいことを言えるか、決める場に居合わせているか。入り方でも分かれるところがあります。ただ、週2日でそこまで深く入れるのかという問いには、まだ言い切れる答えがありません。

挿絵:離れた小島で、一人でチームの様子を追う

業務委託で企業に入るクリエイターの働き方とは

業務委託で働くクリエイターの仕事は、大きく二つに分けられます。一つは、ロゴやWebサイト、撮影のように、依頼を受けて成果物をつくり、納める仕事。もう一つは、期間を決めて企業のチームに加わり、週に何日か社員とともに働く仕事です。この記事が扱うのは後者です。

業務委託で企業に入るクリエイターの働き方とは、外の立場を保ったまま、週に数日、企業のチームの内側で働く関わり方です。組織の一員として見られるかは、日数の多さだけでなく、どこまで内部の言葉で話し、言いにくいことを言えるかで分かれます(GreatRIVER編集部)。

大事にしたいのは「外の立場を保ったまま」という部分です。ほかの仕事を並行していることも多く、社員になるわけではありません。それでも仕事の重心は、成果物を納めることより、チームの中で考え、決めていく過程に加わることに移ります。成果物を納める仕事とどちらが上ということはなく、企業の局面と本人の働き方で選ばれるものです。

難しさも、この「内側で、週に数日」という組み合わせから生まれます。内側にいるのに、毎日はいない。週2日前後で入る働き方の一週間は、いる日といない日の組み合わせでできています。

週2日で入る一週間:いる二日と、いない三日

月曜と木曜に入るクリエイターの一週間を、曜日ごとにたどってみます。

図:週2日で入る一週間(GreatRIVER作成)

月曜の朝は、さかのぼることから始まります。決まったことは、決まった理由から確かめる。いなかったからと一から問い直せば、チームの三日分の時間を巻き戻すことになります。三日前に自分あてに投げられた問いが、返事のないまま埋もれていることもある。月曜の午前は、スレッドを読み終えるだけで過ぎていくこともあります。

火曜と水曜は、いない日です。そのあいだもチームは動き、ときには自分の担当に関わることが、自分のいない打ち合わせで決まります。チームの仕事は週に五日動いていて、自分はそのうち二日にしかいない。それだけのことです。

木曜は、もう一歩深く入れる日です。たとえば、火曜と水曜で固まりかけた方針に、月曜に社内の誰かから聞いた話と食い違う点がある。二日しかいない人が、五日いる人たちの積み上げたものに異を唱えるのは、出過ぎたことに思えます。黙っていれば、打ち合わせは何事もなく終わります。けれど、その一言を口にするかどうかが、この人を外の人のままにするか、一員にするかを分けていきます。

金曜は、またいない日です。木曜に答えの出なかったこと、言えなかったことを書き出しておくと、月曜の朝すぐに使える問いになります。いない三日は、少し離れたところから議論を考え直せる三日でもあります。

組織の一員に見えるかは、日数より入り方で分かれる

いる日が多いほど一員に近づく、という見方は半分は当たっています。けれど、週五日いても「外から来た人」のままの人がいる一方で、いる日は少ないのに「あの人の意見を聞いてから」と言われる人もいます。違いは、どこまで入っているかにも表れます。

図:外の人か、一員か(GreatRIVER作成)

左の端は、頼まれた作業を納める関わり方です。分かりやすく、悪いことではありませんが、外の人として扱われます。その少し右が、会議で意見を求められる関わり方。専門家の意見は大切にされますが、話す順番は社内の人が決めています。

さらに右には、内部の言葉で話す関わり方があります。社内の略語、案件の経緯、誰が何を気にしているか。これを踏まえて話すと、提案は言い換えなくても伝わり、チームの中から出た意見として扱われ始めます。

右の端が、言いにくいことを言う関わり方です。社内の人が立場上言い出しにくいことを、決める場で口にする。社内の評価や人事から少し離れた立場だからこそできることですが、内部の言葉を持たないまま言うと「事情を知らない人の意見」として聞き流されがちです。外の立場は言える理由になり、内部の言葉は受け取られる理由になる。右の端には、この二つがそろって初めて立てます。最後の一歩は、日数が自動的に連れてきてくれるものではなく、本人の構えにかかっています。

週2日で深く入るために、本人にできること

まず、内部の言葉で話せるようになること。分からない略語や呼び名を書き留めて、いる日のうちに尋ねる。過去の資料や議事録で、いまの方針に至った経緯を追う。週五日いる人なら自然に耳に入ることを、週二日の人は自分から取りにいく必要があります。

言いにくいことは、決める前に言います。そのとき、いなかった日の議論を踏まえていることを示すと受け取られ方が変わります。「スレッドで火曜のやりとりを読みました。そのうえで、月曜に伺った話と合わない点があります」。こうした一言は、外からの批評ではなく、同じ側に立った人の意見として聞かれやすくなります。

決める場には、できるかぎり居合わせる。どの会議で物事が決まるのかは早いうちに尋ね、いない日に決まりそうなことがあれば、前のいる日のうちに、何に賛成で、どこが気がかりかを三行ほどスレッドに添えておく。体はいなくても、意見はその場にある状態をつくれます。

いない日は、なくせません。だから、いない日の分だけ、いる日に深く入る。

週2日は足りているのか:私たちも検証の途中にいる

日数が関係ないと言いたいわけではありません。週2日でも十分に深く入れるのか。それとも、どれほど入り方を工夫しても、一員として見られるところまでは至らないのか。

私たちGreatRIVERでも、創造性人材が企業のチームに加わる働き方は、週2日が標準的な形です。そのうえで、週2日が深く入り込むのに足りているのか、逆に組織の一員として見られない水準ではないのか、検証を続けています。参画する人に求める姿勢の一つに「全力で、入り込む。」を掲げ、「遠慮は、半内部の価値を半減させる」と書き添えています。

答えが出ていない以上、働く本人にできるのは、自分の立ち位置を見きわめることです。方針の相談を受けるのが決まる前か、あとか。自分が使った言葉を社内の人が使い始めているか。スレッドで自分の名前が「確認のため」ではなく「意見を聞きたいから」呼ばれているか。どれも数字ではありませんが、自分がどのあたりにいるかを映します。

挿絵:飛び石を渡り、チームの机で一緒に話し合う

まとめ:いる日といない日のあいだで

業務委託で企業に入るクリエイターの働き方は、外の立場を保ったまま、週に数日、企業のチームの内側で働く関わり方です。組織の一員として見られるかどうかは、日数の多さだけでなく、入り方で分かれます。内部の言葉で話すこと、言いにくいことを決める前に言うこと、決める場に居合わせること。そして、いない日をどう使うか。

次の月曜の朝も、木曜の夕方から伸びたスレッドを、上から順にたどっていきます。その途中に、金曜の夜に社員の誰かが書いた一行があります。この件は、月曜に一緒に考えさせてください。自分あての問いが、一つ増えています。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。