プロジェクトデザイナーの出番は、PMが計画を立てる前にある

プロジェクトデザイナーの出番は、PMが計画を立てる前にある

新しいプロジェクトの名前と予算が決まった日の夕方、共有フォルダに工程表の雛形が置かれます。一行目にはプロジェクト名。その下の行には、まだ何も書かれていません。誰が加わるのか、最初の一か月で何に手をつけるのか、この予算が何のためについたのかを一文で言える人も、まだいない。日付の列だけが、来月から右へ整然と並んでいます。

プロジェクトデザイナーとPM(プロジェクトマネージャー)の違いは、軸足を置く時期にあります。プロジェクトデザイナーは、何も書かれていないこの段階で、何のためにやるか、誰と組むか、何から始めるかを描き、そのあとの推進までをリードする。PMは、計画を立て、期日と範囲のなかで確かに進めることに力を発揮する。二つは前後に並ぶ仕事で、一つのプロジェクトのなかで補い合います。

挿絵:白紙の工程表を前に一人たたずむ担当者

プロジェクトデザイナーとは

プロジェクトデザイナーという言葉は、会社や求人によって指している仕事に幅があります。この記事では、次の意味で使います。

プロジェクトデザイナーとは、プロジェクトが動き出す前に、何のためにやるか、誰と組むか、何から始めるかというプロジェクトの輪郭を描き、その後の推進までをリードする職能です(GreatRIVER編集部)。

アマナでは、年間1〜2万件のプロジェクトデザインに携わるなかで、PMやディレクターと並ぶ人材の呼び名として、この言葉を使ってきました。定義にある三つの問いは、始まってから答えようとすると、日々の作業に追われて答えが出ないまま進んでしまうことがあります。プロジェクトデザイナーは、それに始まる前に答えを置きにいく人です。そして描いた人がそのまま推進の側に残るから、途中で前提が揺れたときに、何が変わったのかを見分けられます。

プロジェクトデザイナーとPM(プロジェクトマネージャー)の違い

PMの力がもっともよく生きるのは、描かれた計画を確かに進めていくところ。プロジェクトデザイナーが軸足を置くのは、計画が描かれる前のところです。持ち場の境目というより、重心の違いです。

範囲と期日と予算を見定め、計画を立て、進み具合を揃え、遅れや危うさに早めに手を打つ。PMのこの力なしには、大きなプロジェクトは前に進めません。だからこそ、目的が一文にならないまま工程表を埋めはじめると、PMは揺れる前提の上で期日を守る役回りを負うことになります。それはPMの力不足ではなく、仕事の順番の問題です。何のためにやるのかが先に言葉になっていれば、PMの力はそのまま計画と推進に向かいます。

近い職能には、全体を見渡して論点と選択肢を示すコンサルタントや、使う人の側に立って体験や表現をつくるデザイナーもいます。

図:近い職能との違い(GreatRIVER作成)

四つの違いは能力の高さではなく、どこに軸足を置くかにあります。コンサルタントの整理した論点は描くときの確かな材料になり、デザイナーの視点は目的を「使う人にとって何が変わるか」の言葉に置き換える助けになる。プロジェクトデザイナーは、それらを受け取りながら、目的と顔ぶれと順番を決めていきます。実際には、PMやデザイナーが始まる前の段階から描くこともあり、呼び名より、いまのプロジェクトにどの時期の仕事が足りていないかで考えるほうが実態に合います。

プロジェクトデザイナーが描く、プロジェクトの輪郭

描く輪郭は、目的、顔ぶれ、順番の三つでできています。細かな計画は、この三つが描けたあとに、PMを中心に書き込まれていくものです。

目的は、何のためにやるのか。「売上につながる施策を」「若い世代に届くように」は、目的の手前にある願いです。誰の、何が、どう変われば、やった意味があったと言えるのか。そこまで詰めると、予算がついた理由と成果の基準が、同じ一文に収まります。

顔ぶれは、誰と組むのか。部署の名前を並べるのではなく、最初に話を聞くべき相手は誰か、その人がいないと決められないことは何か、社外の専門家にはどの時点から加わってもらうか。描けると、誰が何を待つことになるかも見えてきます。

順番は、何から始めるのか。すべてを同時に始めると、どれも半ばのまま時間が過ぎます。最初に確かめる問いと、あとに回してよいことが決まると、工程表に書き込むものがようやく生まれます。

図:プロジェクトの輪郭を描く三つ(GreatRIVER作成)

三つは、どれか一つでは足りません。目的と顔ぶれだけでは最初の一歩が決まらず、顔ぶれと順番だけでは途中で何のための作業かが揺れ、目的と順番だけでは描いた人の頭の中にしかない計画になります。冒頭の雛形でいえば、描いたものはプロジェクト名の下の三行です。誰の何がどう変われば成功と言えるかの一文、最初に話を聞く人の名前、最初に確かめる問い。日付の列は空いていても、この三行があれば、PMは何に向けて計画を立てればよいかが分かります。

プロジェクトデザイナーが関わるのは、始まる前

プロジェクトが動き出すと、白紙はすぐに埋まりはじめます。予定が入り、予算が費目に割り振られ、定例の日時が決まる。そのころには、誰も選んだつもりのない前提が、いつのまにか中身を決めています。

計画は、進めながら直せる。輪郭は、始まる前にしか描けない。

途中で描き直すことはあり、目的の言葉が変わることも珍しくありません。それでも最初の三行があれば、何が変わったのか、なぜ変えるのかを関わる人たちと確かめられます。三行がないまま進むと、変わったことにすら気づかないまま、プロジェクトが少しずつ別のものになっていきます。

GreatRIVERでも、プロジェクトデザイナーはPMやディレクターと並んで、部署やプロジェクトの推進をリードする人材の一人です。企業の内側には、戦略をリードする人と推進をリードする人が入ります。

自社にプロジェクトデザイナーが必要かを見立てる

肩書きの人を置くかどうかより先に、いまのプロジェクトで始まる前の三つが描かれているかを確かめるのが順当です。手がかりは三つあります。説明する人や場面によって目的の言葉が変わり、一文にならないこと。関わる部署が多く、誰と先に話すかの順番が成果を左右すること。社内に前例がなく、過去の計画に代わるものを誰かが描かなければならないこと。

反対に、目的も顔ぶれも定まっていて、問われているのが期日と範囲を守ることなら、まず力を借りたいのはPMです。似たプロジェクトを何度も経験している組織なら、社内の誰かが始まる前を描くことも十分にできます。必要なのは肩書きではなく、始まる前に描くための時間と、その仕事を引き受ける人です。

試しに、雛形のプロジェクト名の下に、目的を一文で書き込んでみる。迷わず書けるなら、描く力はおそらく社内にあります。筆が進まないなら、そこが、始まる前の仕事が残っている場所です。

挿絵:道を描く人と道を整える人がつながる島の列

まとめ

PMが計画を立て、進めながら直していくことに力を発揮するなら、プロジェクトデザイナーは、その手前の、まだ何も書かれていない段階に軸足を置きます。二つは前後に並び、上下ではなく、時期と軸足の違いとして補い合います。コンサルタントやデザイナーとも、同じように並ぶ仕事です。

次のプロジェクトの名前が決まる日は、たいてい予告なくやってきます。雛形が共有され、一行目にだけ文字が入る。日付の列が埋まりはじめるまでの、まだ誰の予定も入っていない数日。その静かな数日のうちに、プロジェクトの多くは、もう決まりはじめています。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。