任せるのではなく、内側で回す。「Creative Process Insource」という選択

任せるのではなく、内側で回す。「Creative Process Insource」という選択

写真:内へと巻いていく螺旋(Photo: Declan Sun / Unsplash)

「工程」を任せる、という合理

創造の仕事を外の力と進めるとき、何を任せ、何を手元に残すのか。その分け方には、いくつかの型がある。

業務の工程をまとめて外へ任せるやり方は、BPO(Business Process Outsourcing)と呼ばれる。手順が決まり、良し悪しの物差しがはっきりしている仕事なら、専門の担い手にまとめて渡すほうが速く、品質もそろう。定型の事務や受発注のような工程で広く使われてきたのには、それだけの理由がある。社内の人は、本来の仕事に時間を使えるようになる。

決まった制作を外注するのも、同じ筋の合理だ。何をつくるかが決まっていれば、腕のいい外の担い手に任せることで、質も速さも上がる。ここに無理はない。ただ、この合理には前提がある。何をつくるかが、先に決まっていることだ。

「何を選び、何を捨てたか」は、どこに残るのか

創造の仕事は、少し事情が違う。新しい言葉や体験を形にする過程では、何を解くべきかを立て直し、いくつもの案を比べ、選び、捨てていく。成果物はその判断の結果であり、価値の中心は判断のほうにある。

工程ごと外へ出せば、成果物は戻ってくる。けれど判断は、判断した人のもとに残る。次に似た場面が来たとき、組織はもう一度外へ尋ねるか、最初から考え直すことになる。成果物は残っても、判断の型は残りにくいのだ。

GreatRIVERは、問いを立て、判断し、形にする創造の過程を、外から加わる人材とともに組織の内側で回し、その判断を組織に残していくやり方を「Creative Process Insource」と呼ぶ。略してCPIである。外から借りるのは人の力で、過程そのものは内側に置く。

図:工程を外へ出すと、一本の線は組織の境界の外を回って成果物だけを持ち帰る。外の人が境界の内へ入ると、問い・判断・形の線が内側を通り、判断の跡が組織の中に積もっていく(GreatRIVER作成)

一本の線で描けば、違いは線の通り道にある。工程を外へ出すと、線は境界の向こうへ出て、成果物だけを持って戻ってくる。CPIでは、外の人が境界の内側へ入り、線は内側を通りつづける。そのあいだに、判断の跡が少しずつ組織の中に積もっていく。

「人」ではなく、「過程」を内に置く

ただ、ここで立ち止まって考えたいことがある。過程を内に置きたいのなら、人を採用して内製にすればよいのではないか。

採用と育成は、能力を組織に残すいちばん強い手段だ。GreatRIVERもそれを否定しない。ただ、育つまでには時間がかかる。内側だけで回していると、長くいるほど言葉が似て、判断の軸も似ていく。本質的な問いほど、誰かの立場に触れて口にしにくくなる。

だからCPIが内に置くのは、「人」ではなく「過程」だ。BPOが決まった工程を外で効率よく回す型、外注がつくるものの決まった仕事を任せる型だとすれば、内製化は人を抱えて能力を内に育てる型である。CPIはそのどれとも違い、人を抱えずに、判断の過程を内側に通す。外の人は外に足場を持ったまま、内側の議論に加わる。GreatRIVERが内製化をゴールに置かないのは、この違いがあるからだ。どれが優れているかではなく、仕事の性質に合わせて選ぶものだろう。

役割から入り、判断を書き残す

GreatRIVERがCPIを形にするとき、外から加わるのは半内部人材である。週1〜2日を中心に数か月、定例や意思決定の場にチームの一員として加わる。始まりは役割の設計だ。成果から逆算して、どの議論にどんな視点が要るかを見極め、そのうえで候補者と面談する。

関わっているあいだずっと続けるのが、判断の記録である。何を学び、なぜ決め、なぜ捨てたかを書き残し、組織の知にしていく。結論は議事録に残っても、比べた案や選ばなかった理由は、書き留めなければその場で消えてしまうからだ。

報酬の決まり方も、過程を内に置くことを支えている。半内部人材の価格は週あたりの稼働で決まり、作業の量で売上が増える形ではない。変動費として持てて、問いと判断の型が内に残る。両方がそろったとき、外の人材への支出は投資になる。

写真:中心から広がる幾重もの輪(Photo: H&CO / Unsplash)

「なぜ、これにしたのか」に、誰が答えるか

Creative Process Insourceとは、創造の過程を外の人材とともに組織の内側で回し、判断を組織に残していくやり方だ。外の力を借りるかどうかではなく、どこで判断するかを選ぶことである。

次に外へ頼む仕事を決めるとき、半年後を思い浮かべてみる。なぜこれにしたのかと尋ねられて、社内の誰が答えられるだろうか。答えられる人が浮かばないなら、その仕事は任せる工程ではなく、内側で回す過程なのかもしれない。

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。