縦の組織を壊さずに、横へつなぐ。「クリエイティブメッシュ」という考え方

縦の組織を壊さずに、横へつなぐ。「クリエイティブメッシュ」という考え方

「一度、部署に持ち帰って検討します」

新しいサービスを考えるために、研究開発、営業、ブランドの三つの部署から人が集められた。初回の打ち合わせは、互いの部署が何をしているかを説明するところで時間切れ。二回目からは、それぞれが自部署の立場を代弁する場になっていく。営業が顧客から聞いてきた小さな不満は、研究開発の言葉に置き換えられないまま議事録に残り、三か月後、検討は各部署の持ち帰りで終わった。

部署を越えて人を集めることはできても、それだけで異なる知がつながるとは限らない。階層を壊さずに、異なる知を判断の場までつなぐには、何が要るのか。

写真:暗がりにかすかに見える蜘蛛の糸(Photo: Wyxina Tresse / Unsplash)

「縦の線」と、「網の目」

組織図を思い浮かべると、線はたいてい上から下へ伸びている。誰が決め、誰が実行し、誰が責任を持つか。評価制度とポジションと責任が明確だからこそ、いまの事業を正確に動かせる。ただ、それだけだと、効率的でも新しいものは生まれにくい。

そこに、部署や会社の境目をまたいで、人と人、異質な知と知を結ぶ線を通していく。誰と誰をつなぐか、どんな異質な知を入れるか、何を問い直すか。

GreatRIVERは、評価と責任で決めて動かす縦の組織をそのまま残し、その上に、社内の評価制度に乗らない人を含む質の違う人どうしのつながりを重ねる考え方を「クリエイティブメッシュ」と呼ぶ。メッシュは網の目のことで、その目の一つひとつが、質の違う人の出会う場所になる。

図:決めて動かす縦糸に、外から来た糸を含む質の違う横糸が上下に交わりながら通り、一枚の布になる(GreatRIVER作成)

縦糸だけでは、布にならない。横糸だけでは、すぐにほどける。縦か横かを選ぶのではなく、両方が噛み合うことで、組織は動きながら変わりつづける。澱まない組織の形を、GreatRIVERはそう描いている。

縦の線は、消さない

ただ、ここで立ち止まって考えたいことがある。新しい問いが生まれにくいのは、縦の線が強すぎるからなのだろうか。

横のつながりを大事にする話は、階層をなくす話と受け取られがちだ。GreatRIVERは、そうは考えていない。縦の線は、評価と責任を一本の筋で通すことで、決める速さと動かす確かさをつくっている。それを崩せば、問いは増えても決まらなくなり、いまの事業まで揺らぎかねない。だからクリエイティブメッシュは、縦の線を引き直さず、その上に重ねる。つながりが増えても、決める人は変わらない。

部門横断のプロジェクトチームは、部署を越えて人を集める点で近い。ただ、集められた人が自部署の評価を背負ったままなら、冒頭のように各部署の代表が並ぶ場になりやすい。マトリクス組織は二本の縦の線を交差させる形で、どちらも評価と責任の線だ。社外で経験を積む越境は、人の中に異なる知を育てる。クリエイティブメッシュは、これらと置き換えるものではなく、並べて置けるものである。

人と、場と、行き先

人と人が知り合うだけなら、懇親会でも起こる。それをメッシュと呼ぶには、つながりを偶然に任せない工夫が要る。GreatRIVERが見ているのは三つだ。

人については、拠って立つ評価の物差しが違う人がいること。同じ会社の別部署の人は、部署が違っても同じ評価制度の中にいる。場については、年に一度の交流ではなく、いつもの定例や検討の机でつながること。そして行き先については、縦の線に届くこと。横だけでは決まらないので、つながりの端は、決める人の判断に結んでおく。

図:外から部署をまたいで伸びてきた一本の糸が、縦の線に結び目をつくる。つなぐのは半内部人材、決めるのは企業の側(GreatRIVER作成)

「つなぐ」人と、「決める」人

GreatRIVERは、半内部人材として、企業のクリエイティブメッシュの一部に加わる。担うのは、異なる部署や専門のあいだに入って話を通じさせ、社内と社外、事業とデザイン、技術と文化のように分かれたままの知をつなぐこと。固定化した見方を揺さぶり、問いを変えることだ。担わないのは、意思決定である。決めて動かすのも、企業の文脈を持つのも企業の側で、GreatRIVERは決める場に同席し、選ぶための材料と基準を用意する。

メッシュの中の質の違いも保ちたい。2026年9月時点の登録クリエイター94名は、個人事務所43名、企業所属26名、フリーランス25名と、所属の形がさまざまだ。一つの企業には異なる専門性を持つ人がチームとして入り、状況に応じて人を組み替える。外の人が一人だけなら、それは網というより、一本の線にとどまるのかもしれない。

写真:露をまとい、張りわたされた糸(Photo: Nathan Dumlao / Unsplash)

メンバー表の、いちばん下に

クリエイティブメッシュとは、決めて動かす縦の組織を残したまま、その上に質の違う人どうしのつながりを重ね、問い直しを判断の場まで運ぶ考え方だ。

次に部署を越えたチームを組むとき、メンバー表に、社内の評価制度の外にいる人の名前が一つでもあるかを見てみる。そして、そのチームの問いがどの決める人に届くのかを、表のいちばん下に書き添えておく。それだけで、自分たちの組織の網の目が、少し見えてくるはずだ。

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執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。