創造性が生まれつづける源泉を描く。Creative Advantage Modelという考え方

創造性が生まれつづける源泉を描く。Creative Advantage Modelという考え方

「あの企画のあと、次が出てこない」

社内外で評判になった企画から、三年がたつ。そのときの進め方は手引きにまとめられ、同じ手順で企画会議が何度も開かれてきた。資料は整い、議論もまじめだ。それでも、あのときのような案は出てこない。手順は写せたのに、手順の手前にあった何かが写っていない。

一度きりのひらめきではなく、新しいものが生まれつづける組織には、何が備わっているのか。

写真:暗い部屋にともる一本の灯(Photo: Jarl Schmidt / Unsplash)

手順は写せても、源泉は写せない

企業の創造性は長いあいだ、優れた広告やキャンペーンのような「つくったもの」で評価されてきた。いま問われはじめているのは、ブランドの位置づけや顧客体験、協働の仕組み、人材と組織文化までを含めた、生み出しつづける組織の力だ。GreatRIVERは、これを「Creative Output ではなく Creative Engine」と言い表している。

成果物は写せる。けれど、成果物を生んだ仕組みは、外から眺めただけでは写せない。冒頭の手引きに書けたのは手順で、その手前で何と何が出会っていたかまでは書けなかったのだろう。

しがらみから離れて立てた問いと、その組織に積み重なった想いが同じ場で出会い、形になり、組織に残って次の問いの足場になる。この繰り返しから他社が真似できない創造性が生まれつづけ、それが競争優位になる。その仕組みを描く理論を、GreatRIVERは「Creative Advantage Model」と呼ぶ。ここでいう創造性は、奇抜な発想の才能ではなく、問題を発見し、前提を疑い、異なるものを結びつけ、未来を構想して実装する働きの組み合わせである。

問いと想いが、重なるところ

一つめの源泉は、問いだ。評価も上下関係も背負っていないから、「そもそも何を解くのか」と言える。新しい解決策は、同じ業界の外にある知が持ち込まれたときに生まれることが多い。

二つめは、想いである。その組織を良くしたいという熱量と、積み重なった文脈。こちらは、よそから持ち込むことができない。

図:しがらみから離れて立てた問いと、その組織に積み重なった想いが重なるところに、その組織にしか出せない答えが生まれる(GreatRIVER作成)

問いだけでは、その組織のものにならない。想いだけでは、同じところを回る。二つが重なったところにだけ、その組織にしか出せない答えが生まれる。問いも想いもその組織に固有だから、手法だけを写しても再現されない。

重なるには、場が要る。暗黙知は、同じ場で経験を共にしなければ移らない。野中郁次郎のSECIモデルが「共同化」と呼ぶものだ。月1回の助言やワークショップだけでは深さが積み上がりにくいのは、そのためである。Creative Advantage Modelは、このSECIのスパイラルを、一社の内側から組織の外まで開いたものだと言える。

残ったものの上に、次の問いが立つ

ただ、ここで立ち止まって考えたいことがある。問いと想いが一度重なれば、創造性は生まれつづけるのだろうか。

一度の出会いは、一度の成果で終わる。生まれつづけるには、形になったものが組織に残り、次の問いの足場になる必要がある。残るのは、問い、判断基準、プロセス、知識、つながりだ。何を良しとし、なぜ捨てたか。その過程が残らなければ、次の問いはまた同じ高さから始まる。GreatRIVERはこれを組織の暗黙知と呼んでいる。

図:問い、判断基準、プロセス、知識、つながりが層のように積み重なり、いちばん上に次の問いが立つ(GreatRIVER作成)

この理論は、内か外かを選ぶためのものではない。内側には評価や前例が、外に任せれば文脈の欠けと境界の忖度が、それぞれ問いと想いを遠ざける(詳しくは「内の限界と外の限界」)。内製も外注も否定しない。描きたいのは、重なりと積み重ねが止まらずに続く条件である。

重なる場に、居合わせる

GreatRIVERはこの理論を、社員でも外注でもない半内部人材という置き方で実践している。創造性人材が週1〜2日を中心に数か月、日々の会議や意思決定に加わる。外から助言するのではなく、問いと想いが重なる場に居合わせるためだ。GreatRIVERの人材が大切にしていることの一つに、「全力で、入り込む。」がある。内部の言葉で話せるほど深く入らなければ、持ち込んだ問いは想いと重ならない。2026年9月時点で、登録する94名のうち82名が、六つの領域のうち三つ以上をまたいでいる。問いの幅は、そこから来る。そしてプロジェクトの間ずっと、何を学び、なぜ決め、なぜ捨てたかを記録して残す。

写真:ひとつの灯のまわりに広がる無数の光(Photo: Mike Ralph / Unsplash)

手順の手前に、何があったか

Creative Advantage Modelは、創造性を一人の才能や一度の成果としてではなく、生まれつづける仕組みとして描く理論だ。問いと想いが重なり、形になり、残ったものの上に次の問いが立つ。その繰り返しが、真似のできない強さになる。

うまくいった企画を振り返るとき、手順をまとめる前に、そのとき何と何が出会っていたのかを書き出してみる。次を生む手がかりは、手順よりもそちらに残っているのではないか。

あわせて読みたい定義

プロジェクトが、創発が、絶えず生まれる。「澱まない組織」という在り方

創造性は、才能の名前ではない。「四つの働き」から捉え直す創造性

何を良しとし、何を捨てたか。判断の過程に宿る「組織の暗黙知」

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。