創造性は、才能の名前ではない。「四つの働き」から捉え直す創造性

創造性は、才能の名前ではない。「四つの働き」から捉え直す創造性

「来期は、もっと創造的な案を持ってきてほしい」

期初の会議でそう言われ、誰もがうなずいた。翌週、机に並んだのは三つの案だ。見た目を大きく変えたデザイン案。聞いたことのない新しいサービスの思いつき。そして、昨年の計画に新しい名前をつけたもの。三人とも、言われたとおり「創造的に」考えたつもりだった。

同じ言葉にうなずきながら、思い浮かべていたものはそろっていなかった。この言葉を組織で使える言葉にするには、どこから始めればいいのか。

写真:暗がりに細く浮かぶ光の帯(Photo: Ryoji Iwata / Unsplash)

効率が行き渡ったあとに、残るもの

長いあいだ、より速く、より安く、より正確に、より大量につくれることが、そのまま企業の強さだった。いまはクラウドやSaaS、生成AIによって、効率を高める力は誰でも手にできる。情報を集め、分析し、資料をつくる。すでにある問いに答える仕事は、道具がより速く安く担うようになった。

多くの人が共通して抱えていた問題も、かなり解かれてきた。残っているのは、解いても採算が合いにくい問題か、まだ誰も問題だと気づいていない問題だ。これから希少になるのは、問いを立て、新しい価値を生み出す力だろう。

ところが、その力を指す言葉が、いちばん曖昧なまま使われている。だからGreatRIVERは、創造性を才能や職種の名前ではなく、仕事の中で起きる「働き」の名前として扱う。問題を発見する、前提を疑う、異なるものを結びつける、未来を構想し実装する。この四つの働きを組み合わせて、まだない価値・意味・関係を生み出す力を、GreatRIVERは「創造性」と呼ぶ。

「発見する」「疑う」「結びつける」「形にする」

問題を発見するとは、まだ誰も言葉にしていない問題を見つけることだ。いつも同じところで手が止まる、なぜか同じ質問ばかり届く。そうした小さな繰り返しに目を留めるところから始まる。

前提を疑うとは、当たり前とされている前提を問い直すことである。すべてを否定するのではない。「なぜ、そうしているのか」を一度確かめ直し、その結果いまのやり方を残すと決めることも、立派な働きだ。

異なるものを結びつけるとは、別々の領域の知識や経験をつなぎ、既存の分類からこぼれた可能性を拾うことだ。専門を持ったまま別の領域へ入っていく越境は、この働きが起きやすい場面の一つである。

未来を構想し実装するとは、まだない未来を描き、商品・サービス・ブランド・制度・組織として形にすることだ。描いて終わらせず、反応を確かめながら動くところまで運ぶ。

図:問題を発見する、前提を疑う、異なるものを結びつける、未来を構想し実装するの四つの働きが細い線で互いに結ばれ、線が交わるところに創造性がある(GreatRIVER作成)

一人で、四つそろえるべきか

ただ、ここで立ち止まって考えたいことがある。四つすべてを高い水準で備えた人でなければ、創造的とは言えないのだろうか。

四つは、順番に並んだ工程というより、互いを必要とする関係にある。発見された問題も、前提を疑わなければいつもの解き方に戻る。疑っても、何かと結びつけなければ批判のまま止まる。結びつけた着想も、形にしなければ机の上で終わる。そして形になったものが反応にさらされたとき、また新しい問題が見つかる。

だから大切なのは、一人で四つをそろえることより、組み合わせ方だ。問題に気づく人と、それを形にする人が同じチームにいれば、組織としては四つを持てる。冒頭の三つの案も、それぞれどれかの働きには触れていたのかもしれない。足りなかったのは、組み合わせのほうだ。

「ひらめき」とも「改善」とも違う

創造性は、奇抜なアイデアを思いつくことだと受け取られやすい。ひらめきは大切だが、四つのうちの一部にすぎないのではないか。デザイン部門の話だという見方もあるが、手順に「これは何のためか」と問いを出すことは、営業にも経理にもできる。効率化や改善が与えられた問題を速く解くことなら、創造性は、どの問題を解くべきかを決めるところから始まる。

GreatRIVERに登録する94名のうち82名は、六つの領域のうち三つ以上をまたいで仕事をしている。1人あたりのスキル数は平均13.1だ(2026年9月時点)。肩書きは一つでも、働きは一つの領域に収まっていない。この働きを携えて組織に関わる人を、GreatRIVERは創造性人材と呼んでいる。働きを組織の能力として生まれつづけさせる仕組みは、Creative Advantage Modelとして描いた。

写真:暗がりで色に分かれていく光(Photo: Kirstin Pritchard / Unsplash)

「創造的に」を、四つの問いに

創造性とは、才能や職種の名前ではない。問題を発見する、前提を疑う、異なるものを結びつける、未来を構想し実装する。その四つの働きの組み合わせである。

次に「もっと創造的に」という言葉が会議で出たら、少しだけ聞き返してみる。誰も言葉にしていない問題はあるか。疑えていない前提はどれか。何と何を結びつけるのか。描いたものを、どこまで動かすのか。四つのどれを求めているのかが見えたとき、その一言は、案の出し方をそろえる一言に変わるのかもしれない。

あわせて読みたい定義

職種で人を見ないということ。「問いを変える力」から考える創造性人材

創造性が生まれつづける源泉を描く。Creative Advantage Modelという考え方

トレンドの先ではなく、人の欲求と未来の矛盾へ。新規事業の探索を捉え直す

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。