プロジェクトが、創発が、絶えず生まれる。「澱まない組織」という在り方

プロジェクトが、創発が、絶えず生まれる。「澱まない組織」という在り方

「この一年で、計画になかったプロジェクトはいくつ生まれましたか」

年度末の経営会議。新しく加わった役員の問いに、すぐ答えられる人はいなかった。来期の重点施策は、どれも今期の取り組みの続きだ。業績は悪くなく、誰も手を抜いていない。むしろ全員が忙しい。

計画したことは、着実に進む。では、誰も計画していなかったものまで生まれつづける組織には、何があるのか。GreatRIVERが「澱まない組織」と呼ぶ在り方から、その輪郭をたどる。

写真:まだ散る前のたんぽぽの綿毛(Photo: Marvin Zettl / Unsplash)

「計画になかったもの」は、どこから来るのか

計画は、組織を前に進めるための大切な道具だ。ただ、新しい事業やブランドの転機が、最初から計画表に載っていたとは限らない。部署の違う二人の立ち話、外から来た人の素朴な問い、試作への思わぬ反応。異なる人や知が交わるところから、誰も予定していなかったプロジェクトが立ち上がる。

この「創発」は、命じて起こせるものではない。起こりやすい場をつくり、起きたものを受け止める仕組みを用意しておくことしかできない。だからこそ、個人の才覚ではなく、組織の在り方の問題になる。

GreatRIVERは、新しいプロジェクトと創発が特定の誰かの才能に頼らず絶えず生まれ、その動きが文化として根づいている組織を、「澱まない組織」と呼ぶ。

その条件を、GreatRIVERは三つに整理している。異なる視点が入りつづけていること。その問いが、役割や会議体という受け皿を通って、実際のプロジェクトとして動き出していること。そして、一度きりの成功で終わらず、文化になって広がっていることだ。

図:外から入った問いがプロジェクトになり、文化として広がっていく(GreatRIVER作成)

反対の状態は、同じ人が同じ役割に固定され、新しい問いが入らない組織である。怠けているわけではない。多くの場合、とても忙しい。澱みは、忙しさの中に隠れている。

「つくったもの」から、「生み出しつづける力」へ

企業の創造性は長く、優れた広告やキャンペーンのような「つくったもの」で評価されてきた。いま問われはじめているのは、ブランドの位置づけや顧客体験、協働の仕組み、人材と組織文化までを含めた、生み出しつづける組織の力だ。一つのヒット作には、いずれ他社が追いつく。

ところが組織は、放っておくと澱む方向へ動く。長く同じ場所にいるほど、言葉が似て、判断の軸が似て、疑わない前提が増えていく。誰かの怠慢ではない。人は、所属する場所の言葉で考えるからこそ一緒に働けるのだ。だから澱まない状態は、意図してつくり、保ちつづけるものになる。その仕組みを、GreatRIVERはCreative Advantage Modelという理論として描いている。

階層を壊さずに、網目を重ねる

ただ、ここで立ち止まって考えたいことがある。創発が大切だからといって、階層をなくし、自由にさせれば生まれるものなのだろうか。

GreatRIVERの答えは、そうではない。評価制度、ポジション、責任が明確な縦の線は、既存の事業を正確に動かす。ただ、それだけでは新しいものは生まれにくい。その上に、人と人、異質な知と知をつなぐ網目を重ねる。GreatRIVERはこれをクリエイティブメッシュと呼ぶ。社内の評価制度に乗らない人が加わることで、忖度なく問い直せるようになる。とはいえ網目だけでは、面白くても決まらない。

創発は網目で起き、プロジェクトは縦の線で決まって動き出す。両方が噛み合っていることが、澱まない組織の形だ。

図:縦の線に網目を重ね、交わったところで創発がプロジェクトとして動き出す(GreatRIVER作成)

ティール組織は運営と意思決定のあり方を、オープンタレントやギグワークは働き方や雇用の柔軟性を扱う言葉である。澱まない組織が扱うのは、創造性という能力を組織に移し、めぐらせることだ。GreatRIVERが内製化をゴールに置かないのも、そのためである。内製を否定するのではない。内製が進んでも、視点が入りつづける形を考えている。

ただ一つの問い、「澱んでいないか」

澱みは、一つの数字では表せない。直近の大事な判断の場に、社内の論理を背負っていない人が居合わせたか。新しい取り組みを言い出すのが、いつも同じ数人ではないか。言い出した問いに、実際に人と時間が割かれているか。持ち込まれた問い方を、社員が自分の言葉で使っているか。確かめるのは、そうした場面だ。

GreatRIVERは、創造性人材を企業の内側に迎え入れてもらう伴走を続けてきた。これまでに関わった企業は26社、組織やプロジェクトは45件。週1〜2日を中心に、日々の会議や意思決定の場に、チームの一員として加わる。現場で問うのは、ただ一つ「澱んでいないか」だ。

何を学び、なぜ決め、なぜ捨てたか。その記録を残すことも続けている。判断の過程が残らなければ、次の創発は同じ高さから始まらない。残すべきは結論より、組織の暗黙知なのだ。

写真:風に散っていく綿毛(Photo: Saad Chaudhry / Unsplash)

計画の外で、何が生まれているか

澱まない組織とは、新しいプロジェクトと創発が特定の誰かに頼らず絶えず生まれ、それが文化として根づいている組織だ。一度つくれば終わるものではなく、保ちつづけるものである。

来期の計画を見直すとき、この一年で計画の外から生まれたものを、一つ挙げてみる。すぐに浮かばなければ、そこが組織の止まっている場所なのかもしれない。

あわせて読みたい定義

創造性が生まれつづける源泉を描く。Creative Advantage Modelという考え方

縦の組織を壊さずに、横へつなぐ。「クリエイティブメッシュ」という考え方

何を良しとし、何を捨てたか。判断の過程に宿る「組織の暗黙知」

執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)

企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。

GreatRIVERは、プロジェクトデザイナーをはじめとする創造性人材がチームで参画し、構想と推進の両面から企業のプロジェクトに内側から伴走するサービスです。まずは停滞しているプロジェクトの見立てからで構いません。