
内側だけでも、外側だけでも越えられないもの。「内の限界」と「外の限界」
「社内で考えると、どうしても無難になる。外に頼むと、今度はうちらしくなくなる」
新しい取り組みの進め方を決める会議で、こんな言葉が漏れることがある。社内でまとめた案は、どの部署からも反対が出ないかわりに、どこかで見たことがある。外に頼んだ案は切り口が鮮やかでも、既存事業の事情が入っておらず、誰が動かすのかが見えない。どちらの出来が悪いわけでもない。
内側だけでも、外に任せるだけでも越えられないものが、なぜあるのか。

「無難」と「らしくない」は、どこから来るのか
組織には、一本の線が引かれている。雇用や評価の内側と、その外側を分ける線だ。線の内側にも外側にも、それぞれ手の届かない場所がある。
GreatRIVERは、組織の内側にいるからこそ本質的な問いが止まってしまう構造を「内の限界」、外に任せるほど想いと文脈が宿らず、内と外の境界に新しい利害と忖度が生まれる構造を「外の限界」と呼ぶ。
どちらも、人の意欲や能力の問題ではない。社員が臆病なのでも、外の専門家の腕が足りないのでもない。内側にいること、外側にいることそのものから生まれる構造である。二つは、創造性が生まれつづける仕組みを描いたCreative Advantage Modelの中で、その仕組みを止める力として置かれている。

「言えない」内側と、「宿らない」外側
内の限界は、三つの形で現れる。まず、言えないこと。本質的な問いほど、立てた瞬間に誰かの立場を脅かす。評価を気にすれば言えなくなり、上下関係があれば引き下がる。次に、見えないこと。長くいるほど言葉が似て、判断の軸が似て、疑わない前提が増えていく。そして、続かないこと。新しい取り組みは本来業務との掛け持ちで担われ、異動で担い手が替わる。学びが残らず、推進が途中で止まる。
外の限界は、渡せないものから始まる。目的や要件は依頼の資料で渡せても、なぜこの事業を続けてきたのかという経緯や、その企業を好きである理由までは持ち込めない。意思決定の場に加われず、制約を知りきらないまま出された答えは、「正しいけれど実行できない」ものになりやすい。さらに、線の上には忖度が生まれる。作業量や発注範囲で報酬が決まる関わり方では、減らす提案ややめる提案が出にくい(この点は「利害の向き」に書いた)。任せた内側もまた、任せた以上は口を出しにくい。
強みと限界は、同じところから
ただ、ここで立ち止まって考えたいことがある。内側で行き詰まったら外に頼み、外で行き詰まったら内に戻す。そうして行き来すれば、二つの限界は越えられるものなのだろうか。
GreatRIVERの見方は、そうではない。二つの限界は、どちらもその立場の強みと同じところから生まれているからだ。社員の強みは、文脈を知り、その会社を良くしたいと思っていることにある。けれど文脈を知っていることは前提を疑わないことと、想いがあることは立場を失いたくないことと、隣り合っている。外の人の強みは、しがらみの外にいることだ。けれど外にいるからこそ、想いと文脈は届かない。
心理的安全性を高めることは「言えない」をやわらげるが、「見えない」と「続かない」までは覆わない。外の相手と長く付き合えば文脈は増えるが、契約の形が同じなら、線の上の忖度は残る。どれも意味のある手立てで、限界の一部をやわらげるものなのだろう。
「境目」に、席を置く
GreatRIVERは、二つの限界を、どちらかを消すことで越えようとはしない。強みと同じところから生まれる以上、消そうとすれば強みも削ってしまう。代わりに、内と外の境目に席を置く。
その置き方が、社員でも外注でもない半内部人材だ。創造性人材が週1〜2日を中心に、定例の会議や意思決定の場にチームの一員として加わる。社内の評価制度に乗らないので、前提にも問いを向けられる。決める場に居合わせるので、制約も経緯も日々の議論の中で知っていく。毎月、企業と人材のパフォーマンス状況を共有し、状況に応じて人を組み替える。何を学び、なぜ決め、なぜ捨てたかの記録も、プロジェクトの間ずっと残していく。
GreatRIVERの人材が大切にしていることの一つに、「正論ではなく、心を動かす。」がある。正しいけれど実行できない答えにとどまらないための構えだ。内製も外注も、否定するものではない。採用と育成は、組織が力をつけるもっとも強い手段である。半内部は、それぞれが限界に当たる場面を、別の位置から補う置き方なのである。

止まりそうなのは、問いか、想いか
内の限界は、内側にいるからこそ本質的な問いが止まる構造だ。外の限界は、外に任せるほど想いと文脈が宿らず、境界に利害と忖度が生まれる構造だ。どちらも能力ではなく、立っている場所から生まれる。
次に新しい取り組みの進め方を決めるとき、内か外かを選ぶ前に、この仕事で止まりそうなのは問いなのか、想いなのかを考えてみる。その答えが、誰をどの席に置くかを教えてくれるのではないか。
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執筆:杉山 諒(株式会社アマナ/プロジェクトデザイナー・GreatRIVER主宰)
企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニング・ファシリテーションを中心に企画・設計に従事。クリエイティブ人材育成プログラムamana Creative Camp、創造性人材循環事業GreatRIVERを主宰。認知科学コーチ。
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